髄膜播種について、もう少し突っ込んで調べてみました。
とはいえ、なかなか気力が湧かないので、片端から読んでみるという訳にもいきません。

そんな時、文献(中洲庸子「固形癌からの髄膜癌腫症:分子標的治療時代の臨床」)を見つけました。


2018年のもので少し古い(例えば、免疫チェックポイント阻害薬についてほとんど記述がない)のですが、コンパクトにまとまってました。

少々理解不足の所もありましたが、自分(EGFR陽性、タグリッソ耐性後、髄膜播種疑い)に関係ありそうなところを抜き出しました。
ただし、個人的に作成したもので、抜き出しですので、きちんと理解されたい方は原著に当たられることをお勧めします。
また、かなりショッキングな話、数字も出てきますので、ご注意ください。
 

  • 髄膜癌腫症について
    • 髄膜癌腫症は、腫瘍細胞のくも膜下腔への侵入を表す
    • 腫瘍結節としてくも膜下腔の組織に付着し存在する形、あるいは組織には付着しない浮遊癌細胞が脳脊髄液の中に後半に分布する形、に分けられ、両者の併存も多い
  • 髄膜癌腫症の症状について
    • 症状の頻度は、脳神経麻痺75%、頭痛66%、脊髄根症状60%、神経症状45%、四肢麻痺44%、歩行障害33%、髄膜刺激症状21%、感覚障害21%、嘔気嘔吐20%、小脳症状16%、発作12%
    • 項部硬直は20%程度の頻度で出現し、首が回らない、会釈ができない、などと表現されることがある
    • 頭蓋内圧亢進による視力低下、強い頭痛は緊急処置を要することがある
    • 脳神経の麻痺、すなわち視力低下、複視、難聴、顔面神経麻痺は、患者が自覚症状として訴えないことがあり、ベッドサイドで最も注意が必要な徴候である
    • 脊髄症状として膀胱直腸障害も起こりうる
  • 髄膜癌腫症の診断について
    • CTは水頭症を否定する目的で行ってもよいが、脳表・脳槽などの質的評価における分解能がMRに劣る
    • 水頭症は髄液吸収障害または結節病変によるくも膜下腔の閉塞による
      • 特に若年者では、脳室拡大は軽度なことも多い
    • 脳脊髄液細胞診は、固形がんではその陽性率は1回穿刺で50~60%、2回目で約80%、3回以上では殆ど上昇しないとされているので、10ml以上の十分量の採取と2回の検査が推奨されている
  • 髄膜癌腫症の治療効果判定と予後予測について
    • 固形がんによる髄膜癌腫症の患者は生命予後が短く、治療しない場合は、生存期間中央値が6~8週間とされている
    • 放射線治療や薬物治療は生存期間を少し伸ばすが、それでも生存期間中央値は2~8ヶ月と報告されている
    • 分子標的治療の進歩によって、原発の癌腫別の予後因子が明らかとなってきており、非小細胞肺癌の髄膜癌腫症ではEGFR-TKI投与と放射線治療を受けた患者の生存期間が長かった
  • 髄膜癌腫症の放射線治療について
    • 放射線治療は脳脊髄液循環を再開させ、症状を緩和することができ、しかも薬物療法よりも効果が速やかに出る。
    • 全脳照射の生存期間に対する効果は少ないと考えられており、例えば非小細胞癌からの髄膜癌腫症の患者に対しての後方視的研究では、全脳照射は生存期間延長の効果をもたらさなかった
    • 定位的放射線治療照射を含めた局所照射が検討されてもよい
      • 薬物治療の適応がある患者でも、結束性病変があって髄液還流障害、疼痛などの神経障害の原因となる場合には、髄液内薬物の拡散を助け、患者のPSを改善する目的で、薬物療法に先立って放射線治療を検討すべきである
  • 髄膜癌腫症の従来の全身および髄腔内薬物療法について
    • 大量のメソトレキセート(MTX)療法による効果が報告されたが、標準治療とはなっていない
    • 髄腔内投与は、血液髄液関門を迂回し、全身への毒性を防ぐため脳脊髄液に直接投与する
      • 脳脊髄液に投与された薬剤は結束性腫瘍への浸透には限界があり、浮遊する腫瘍細胞に向けた治療となる
    • 全身と髄腔内投与の併用の相加的な効果についてもエビデンスは乏しい
  • 髄膜癌腫症の分子標的薬療法について
    • 分子標的薬で既に十分治療を受けたのち、全身的に病勢のコントロールが不良な場合は、髄膜癌腫症に対する分子標的薬の適応はないと考えられる
    • がんの遺伝子変異は、同一患者の体内であっても、時間的・空間的に不均一であることが知られており、原発巣と転移病変でかならずしも同一ではないことに注意が必要である
    • 第三世代のオシメルチニブは、血液髄液関門の透過性が他のTKIよりも優れている
  • 髄膜癌腫症の緩和的治療について
    • 頭蓋内圧亢進症状で苦しむ患者には、脳室腹腔シャント術がしばしば有効であり、術後速やかにPSが改善する
    • 脳脊髄液から腹腔への腫瘍細胞の播種のリスクはあるが、非常に稀にしか起こらず、全身薬物療法を実施できれば、くも膜下腔には不十分であっても腹腔内には薬剤移行が良く充分制御可能なことが多い
    • 副腎皮質ステロイド剤は症状改善に役立つ
    • てんかん発作は11~18%の患者に出現する報告がされている
      • 抗てんかん剤は他の薬剤とくに抗癌剤と相互作用がない薬剤を選択する