今日は曇り時々雪。冬型の気圧配置が強く、日中でも氷点下の気温。寒いです~

2015年もあと僅か。今年はライブ・アルバムをメインにレビュー記事を書いてきましたが、今年最後に紹介するアルバムは

JACO PASTORIUS ~ LIVE IN NEW YORK CITY RACA 5

です。

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ライブ・アルバムを中心に紹介しようと思った、きっかけのアルバムでもあります。

1. Blackbird
2. Continuum
3. Mood Swings
4. After you
5. Sly Shuffle
6. Raca
7. Teen Town
8. Three Women
9. Good Morning Anya

1997年にリリース。1984~87年にかけてNYで行われたライブを収録した一連のシリーズの5枚目。
Vol.7までリリースされたそうですが、いずれも現在は入手困難な状況になっています。

いわゆるブートレッグと呼ばれる類のもので、正規のライブアルバムではありません。ですが、録音状態も非常に良く晩年のジャコ・パストリアスのプレイということもあり、非常に貴重なアルバムではないかと思います。

僕が初めてジャコのアルバムを買おうと思って(今ではなぜそう思ったのか忘れてしまいました)、タワレコのジャズコーナーで探しまわっていた時に見つけたアルバムでした。これしか無かったのかもしれません。

まず、ジャコ・パストリアスについて簡単に紹介します。1951年生まれのジャズ・フュージョン系のベーシスト。1975年のパット・メセニーの初リーダー作に参加。翌年の’76年に「ジャコ・パストリアスの肖像」でソロデビュー。並行してウェザー・リポートのベーシストとして活動。また、ジョニ・ミッチェルやハービー・ハンコック、マイク・スターン等のアルバムに参加。

81年に2ndスタジオアルバム「ワード・オブ・マウス」をリリース。ウェザー・リポートを82年に脱退し、自身のバンド活動を中心にしていきます。

この頃から奇行が目立つ様になり、薬物等の影響と精神疾患を患い、入院治療を行うまでになりました。
1987年、ライブに飛び入りしようとした時にガードマンと乱闘。その際に頭部を強打し、それが元で同年9月に他界しました。まだ35歳という若さでした。

僕はジャコと言うと、どうしても奇行や暴力的というイメージが強く、名前はずいぶん前から知ってはいたのですが、楽曲を聴くに至りませんでした。

ですが、このアルバムを聴いてから、そのイメージが一変しました。

彼のベースはそのイメージとはかけ離れた、むしろ爽やかで柔しいという感じ。もちろん爆テクもすごいのですが、1曲目のビートルズのカバー「Blackbird」は彼のテクニックと音色を存分に楽しめ、そしてイメージを変えるにふさわしい演奏でした。

ジャコはベースをメイン楽器にのし上げた功労者と言っても過言ではない人だと思います。それまでは、あくまでリズム隊の一つの楽器であり、ベース・ソロがあっても一連の流れからのものであったと思います。
ですが、彼はベースをギターやボーカルと同等の楽器の花形にしました。ハーモニクスや4フィンガーによる速弾き、エレキギターで使うようなエフェクターやフィードバックと言った奏法も多用し、ベースそのものの可能性を広げたのです。僕も彼のベースを聴いてから、ベースという楽器にも興味が湧きましたし、面白さも知りました。

アルバムのほうに戻しますと、1曲目のBlackbirdからのCONTINUUMへの流れは素晴らしく綺麗。3曲目は16分という長さですが、セッションならではの緊張感と躍動感がありますね。一転、4曲目はゆったりとした感じになるという感じ。アルバム・タイトルにも入っているRACAは爽やかな感じで聴きやすい楽曲だと思います。

ギターのマイク・スターンは以前エリック・ジョンソンとの共作アルバムで紹介したのですが、この時から独特の音色は変わっておらず、ピッチを少しずらして空間系エフェクトをかけたような音色が、アルバム全体を別世界に誘っているような感じがしますね。

このアルバム、実はしばらく寝る前に頻繁にかけていた事がありました。それくらいゆったりとした感じを受けるアルバムなんです。でもテクはすごいです。

今、日本でもKenKenやハマ・オカモト、BOHなどのベーシストに注目が集まっています。僕はギターが大好きでギタリストのソロアルバムが大好きなのですが、そういう人でも魅力的に感じるジャコのベースを一度聴いてほしいなと思います。

今年はジャコのドキュメンタリー映画も上映されたそうで、そのサントラもリリースされています。興味が湧いたという方は是非チェックしてみてはどうでしょうか。

このアルバムは入手困難ですので、是非名盤「ジャコ・パストリアスの肖像」を聴いてほしいなと思います。

日本レーベルサイト ソニー
             ワーナー




このアルバムには収録されていませんが、ジミヘンの「Third Stone from the Sun」のカバーです。カッコイイですし、ベースソロとは思えません。


ドキュメンタリー映画「Jaco」のサントラから、ロドリーゴ・イ・ガブリエーラのカバーです。

ということで、今年のレビュー記事はジャコ・パストリアスで締めることになりました。今年はライブアルバムを紹介するというテーマでしたが、正直ジャズ系に偏ってしまったのかなというのが反省点ですね。あと、後半青系のジャケ写が並んでしまいました(偶然ですが)。近年ライブアルバムのリリースが洋・邦楽ともに多くなりました。録音技術とリマスタリング技術の向上が理由だと思いますが、その背景にはオリジナルアルバムがなかなか売れないというのもあると思います。音楽市場が節目を迎えている今、リスナー側も考えなければならない事があると思いますね。

来年はどういうテーマにするかまだ考慮中ですが、まだまだ紹介しきれていないライブアルバムもあるので、機会を見て紹介したいなと思います。