【書名】未来ビジネス図解 新しいDX戦略
【著者】内山悟志
【発行日】2021年7月1日
【出版社等】発行:エムディエヌコーポレーション
【学んだ所】
・業務の量と質を向上させる
- 企業の業務には、新しい製品やサービス、ビジネスモデル、顧客体験、需要を生み出すような「付加価値業務」と、その価値を確実に生産したり、届けたり、それらを管理したりする「オペレーション業務」がある。⇒まずは、オペレーション業務に費やす時間を低減し、付加価値業務の時間比率を高める必要がある。
- 現在、多くの企業において、全業務量のうちの大半がオペレーション業務に費やされている。⇒しかし、デジタル化の時代には、オペレーション業務のほとんどすべてが、画像認識などを含むAI、ソフトウェア・ロボット(RPA:ロボティックプロセスオートメーション)などによって代替できるようになる。⇒手書きや紙ベースの書類、手作業、目視、体面など、物理的な業務をデジタル技術によって置き換え、自動化や省力化を実現する。⇒また、反復的・物理的な作業や、事前に手順をプログラム化できる仕事だけでなく、経験を要する仕事や、複数の要素を組み合わせて判断しなければならないような、現場における日常の意思決定業務も、その対象となる。
- 次のステップでは、業務量の配分を変えるだけでなく、オペレーション業務と付加価値業務の両方において、業務の質を高め、同じ業務量で生み出すアウトプットを増大させることが求められる。⇒オペレーション業務は、処理や作業がスピードアップするだけでなく、データがデジタル化により可視化されることで、ミスが減り、業務や意思決定の精度や品質が上がる。そして、付加価値業務の質も高めていかなければならない。⇒創造的な活動を促進するためには、アイデアが生まれやすい、協調的な作業を行いやすい、データや情報を高度に分析・活用できる、といった環境を整えることが求められる。⇒そのためには、情報や知識の探索や再利用を簡便に行えるツール、社内外の関与者が簡便にアクセスできる情報共有やコラボレーションの環境、データを高度に分析できる基盤などを整備することが求められる。⇒オペレーション業務と付加価値業務の両方において、デジタル技術を駆使することを前提に、業務そのもののあり方を抜本的に見直し、再設計することが重要。
・再考すべき点は多岐にわたり、労働と報酬の関係、働く場所、組織のあり方、意思疎通や合意形成のあり方、指揮命令および報告の方法、意思決定の方法など、多層構造になっている。=これまでの常識に疑問を持つような発想が求められる。⇒このような多層構造のすべての層を変革していくのが、DXにおける働き方改革の本質。
・現場業務のデジタル化の着眼点:デジタル化によって現場業務を効率化したり、省力化したりすることも有効な施策だが、さらに一歩進めて、業務そのものを不要にしてしまったり、これまでできなかったことを可能にしたりするような施策を実現するためには、現状の延長線上にあるような発想ではなく、これまでの常識を打破するような斬新なアイデアが必要。そのうえで大切になる4つの着眼点がある。
- 物理的な制約を回避できないか:これまで人手や目視で行っていた作業には、物理的な制約のためにデジタル化が進んでいないものが多くある。⇒点検、検品、保守といった業務の場合、ライブカメラやIoTなどで捕捉したデータに画像認識や分析を適用することによって、省人化・無人化できる可能性がある。
- 地理的な制約を回避できないか:遠隔監視、遠隔診断、遠隔操作などネットワークを介することで、これまで実現できなかった「どこからでもできる」ということが実現する可能性がある。
- 危険を軽減できないか:物理的作業には危険を伴うものも多く、高所や危険な場所でドローンやロボットを活用する事例も見られる。
- 暗黙知を形式化できないか:現場作業には、ノウハウや経験といった暗黙知が必要な場合が多く、これらは人の頭の中にあるものだが、これを形式知化(データ化)して活用したり、機械が学習したりできるものもある。
・これまで業務改善のための情報化では、まず事業部門の現場スタッフなどに対するヒアリングによって、課題や業務要件を引き出すことが一般的に行なわれてきた。⇒しかし、DXではこの手法が通用しない場合がある。⇒現場スタッフは、現在の仕事や業務プロセスに慣れ親しんでいて、疑問を持たずに遂行していることがある。⇒また、目の前の不満や日々の問題はよく見えていても、俯瞰的な見方ができていなかったり、潜在的な問題には気付いていなかったりすることも珍しくない。⇒したがって、現在の課題や問題点をあまり熱心に聴きすぎることで、業務そのものを大きく見直す可能性を見逃してしまったり、斬新な発想が生まれなかったりすることがある。
・デジタル技術を活用した革新的なアイデアを発想するためには、ゼロベースで適用の可能性を探ることが求められる。⇒これに対処する1つの方法としては、AIなどの技術を理解しており、他社での適用事例をたくさん知っている人が、先入観を持たずに業務現場をじっくりと観察して適用可能性を探ることが挙げられる。
・社内のIT担当者や社外のコンサルタントのような人材は、業務知識が不足していることがしばしば問題視されるが、あまり詳しく知らないほうが、ゼロベースのアイデアや斬新な発想が生まれやすいということもある。⇒また、デジタル技術を詳しく知らない現場スタッフに対しては、「どのようなことが可能となるのか」、「他社ではどのような活用事例があるのか」といったことについて啓発し、発見を呼び起こすという方法も考えられる。⇒実機を使ったデモなどで体感してもらうことも有効。
・重要なことは、IT側や業務現場側といった対立構造を作ることなく、互いが教え合い、意見を出し合い、対等に議論を尽くして取り組むこと。
・製品のスマート化:状況に応じて制御・運転を行ったり、運用を最適化したりするインテリジェントな機能を製品に組み込むことを意味する。⇒製品のスマート化をデータの流れに着目すると4つに分類することができる。
- インターナル型:自己完結型ともいえる。製品が自らの稼働状況などをモニタリングし、それに応じて自動で制御、診断、修復、運転などを行うもの。⇒通信機器を具備しているため、収集したデータを外部に送信することはできるが、送信先は主に製品のほかの部位や周辺装置、または設置施設内の制御・監視装置などに限定される。
- インサイドアウト型:自らの状態や周辺の環境をモニタリングし、遠隔地のセンターなどに観測データを送信する。⇒連続的なデータをリアルタイムで送信するものもあれば、一定期間のまとまったデータを送る場合もある。また、異常などを検知した場合にアラートだけを送信するものもある。
- 双方向型:製品からデータが外部に送信されるとともに、遠隔地からソフトウェアの更新、修理、操作などを行うことができる。これにより現地での無人の保守や運転が可能となる。また、製品の機能や性能のバリエーションをソフトウェアで変更することもできる。
- フィードバック型:製品から送られたデータを分析するなどして、さまざまな付加価値を提供することができる。⇒利用状況に応じた柔軟な料金モデルの実現、最適な利用方法のアドバイス、マーケティングへの活用などが可能で、今後最も注目されるタイプといえる。
・モノを買って所有することが喜びでありステータスであるという考え方から、必要なときに利用できれば良いという考え方への移行も顕著になってきている。⇒これに対応するために、自社の商品を売り切り型で販売するのではなく、一定期間利用してもらうような契約形態の、サブスクリプションというモデルが注目されている。⇒提供する商品そのものを変えるわけではないものの、その提供形態を変えることで顧客のライフスタイルや価値観の変化に対応しようとする動きと捉えることができる。⇒すなわち、所有型から利用型へ向かう顧客や社会の需要に応えるための選択肢といえる。
・サブスクリプションモデルのメリット
- 顧客側のメリットとしては、大きな初期費用が不要であること、必要な期間だけ利用できることなどが挙げられる。⇒試しに使ってみたり、いろいろな製品を使ったりできる点もメリットだし、管理の手間が省けたり、金銭的にお得だったりする場合もある。
- 事業者側のメリットの1つは収益の安定性が確保されること。⇒不確実性の高いビジネス環境においては、従来型のビジネスモデルや課金モデルだけでなく、外部環境の変化や顧客のニーズに合わせて複数の提供形態を選ぶことができたり、情勢に合わせてモデルを変更できたりするような弾力のある事業運営が、ますます重要となる。
- 事業者側のメリットのもう1つは需要動向や利用状況が捕捉できるということ。⇒サブスクリプションは、顧客の継続利用を前提としているし、とくにネットワーク経由で利用状況が収集できる場合は、高頻度で継続的な需要データの捕捉や分析が可能となる。⇒利用者が、頻繁に使っているのか、あまり利用しなくなっているのわかるし、さらに上位のサービスを利用する可能性があるのかといったことを予測することもできる。⇒利用者が顧客となった瞬間から関係構築が始まり、継続的な付き合いを通じてサービスを改善・最適化し続けることで、ビジネスに成長をもたらすことも可能。
・エコシステムとプラットフォーマー
- エコシステムという言葉は、1930年代にイギリスの植物学者によって造り出されたもので、動植物が水や土壌などの環境と影響し合いながら暮らすコミュニティを指す用語として使われてきた。⇒そして今では、この動植物の生態系を意味する言葉を比喩的に用い、企業などの緩やかな依存関係や協調関係によって形成される新たな価値連鎖構造を、エコシステムと呼ぶようになった。
- とくに、デジタルビジネスの世界では、企業やビジネスシステムが互いにつながり合うことで、より大きな価値を生み出すことから、エコシステムの構築が有効なビジネス戦略と考えられる。⇒そして、デジタル時代のエコシステムの中核に位置する事業者がプラットフォーマー。
- プラットフォーム戦略は、ビジネスや価値創造を行う場を提供するものであり、昨今のデジタルビジネスの分野だけでなく、以前から青果市場、ショッピングモール、家庭用ゲーム機、おサイフケータイなど、さまざまな分野で活用されてきた戦略といえる。⇒しかし、デジタルビジネスの世界では、顧客同士がSNSなどで直接つながり合ったり、コミュニティを形成したりすることが頻繁に起こる。⇒また、事業者同士が連携したり仲介者を介したりすることもあり、その構造が複雑かつ変化に富んでいることから、情報の連携がより重要となり、プラットフォーム戦略がより効力を発揮する。
- プラットフォーマーにとって優位性を維持・拡大するために重要な戦略は、プラットフォームに蓄積される大量のデータを分析することで、自社のマーケティング力の向上や関連事業の拡大を図り、その市場における支配力を増大させること。⇒さらに、分析結果をほかのプレーヤーや異業種のプレーヤーに有償販売する、データを活用して異なるカテゴリーへ進出するといった戦略によって、周辺領域に影響力を拡大する好循環を築くこと。=優位の源泉となるのはプラットフォーム上に蓄積されるデータであることを意味する。⇒その結果、価値の高い情報やサービスを提供することができ、プラットフォーム自体の価値も高まる。⇒さらに、分析結果を有償で提供するビジネスの展開もできるし、それを基に新たなビジネス分野に進出することも可能となる。
- プラットフォーム戦略で成功を収めるには、まず多くの仲間を集めなければならない。⇒そのためには、多数が集まりやすいようにプラットフォームをオープンなものにすることが望ましい。⇒次に、集まった仲間(提供側と利用側の両方)に便益を与えつつ、自らの収益も増加させる共存共栄の状態を作り上げることが求められる。⇒どちらか一方だけが得をする仕組みは長くは続かない。プラットフォームにメリット感じればプレーヤーや顧客はそこにとどまり、さまざまなやり取りを続けるはず。
- 最終段階では、プラットフォームの参加者であるプレーヤーのビジネスや利用者の生活に深く入り込むことで、支配力を高めることが求められる。これこそが、プラットフォーム戦略の成功の鍵といえる。⇒支配力を獲得できれば、参加者が定着し、それに引き寄せられてさらに仲間が増えるという好循環を作り上げることができる。
・ユニークなビジネスモデルを創出するには、これまでの常識や商慣習にとらわれない、大胆な発想が求められる。⇒そのための着眼点として、企業戦略の立案やマーケティングのフレームワークで用いられる3C(顧客、競合、自社)および4P(商品、価格、プロモーション、流通)を変えてみる発想が有効。
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