【書名】交渉術
【著者】佐藤優
【発行日】2009年1月30日
【出版社等】発行:文藝春秋
【学んだ所】
・一般論として、嘘が露見した場合にとる方法は二つある。
- 嘘をついたことを認め、相手に詫び、嘘をつかざるを得なかった事情について説明する。⇒もちろん、相手は嘘をついたことに関しては怒る。しかし、事情を説明することで、こちら側が受ける打撃を減じることができる。
- 嘘はついていないと怒って見せる。
・「死んだふり」や土下座は、相手を畏怖させる。⇒徹底した弱者の立場に立つことで、力関係を逆転させる契機をつかむことができる。⇒このような恥知らずで、「死んだふり」をするような、恐ろしい人物には、重要な仕事を頼まない。
・政治家は、自らの政治生命を賭した案件については、結果がすべてと考える。
・官僚の職業的良心は出世である。⇒まず、恥知らずになることである。⇒日本では、ルース・ベネティクトの「菊と刀」の影響で、欧米は罪の文化、日本は恥の文化という二分法がなされているが、これは日本人の大いなる誤解の一つである。⇒罪も恥も普遍的概念で、欧米にも日本にも中東にも、世界中どこにでも、罪の文化と恥の文化の双方がある。
・恥という感覚を無視することによって、虚をつくことができるのである。
・市民社会において世間体を気にする人々が「他者との関係で、どう見られるか」という恥の感覚を強く持つのだと思う。⇒一般論として、この人々に罪の意識が希薄であるということも確かに言えよう。⇒これに対して、中流より下の庶民と、トップエリートは罪の観念を強く持つ。もちろん、恥の感覚もあわせもつ。⇒トップエリートに上り詰めるまでには、実力だけでなく、運の要素が重要だ。⇒このような運の要素を重視する人々は、必ず超越性を意識する。自分の努力や計算によっては達成できない外部があるということを感じ取るのである。⇒この超越性、外部性に照らして、自分の欠点を罪として意識するのである。
・日本の庶民層においても、「お天道様が見ている」というのが罪の意識であり、「世間様に顔向けができない」というのが恥の意識だ。⇒「日本人には恥はあるが、罪はない」というのは、日本人を貶めるためのイデオロギー操作だ。
・恥の文化の世界で生きている中流層のビジネスパーソンには、恥を棄てることは、競争に勝ち抜く上でたいへんに効果をあげる。⇒もっともいつも恥知らずの行動をしていると、周囲から鼻つまみになり、誰からも相手にされなくなる。
・結果として、国益を増進し、国家目標を達成すればよいのである。
・一旦、恥を棄てると、その後の、自分の姿が見えなくなってしまうのである。そして、残りの人生はずっと阿修羅道をさまようことになる。
・政治家には「スイッチ」がある。⇒同じ話をしても、スイッチが入っているときといないときでは、政治家の反応は全く異なるのである。⇒スイッチが入っていない政治家に、官僚がどんなに重要と思う事項を話しても、政治家は聞き流すか、「もういいよ」と言って、最後まで話を聞かずにさえぎる。
・相手が好意的誤解をしているときは、それを放置しておくこともインテリジェンス交渉術の要諦だ。
・トップは孤独に耐えなくてはならない。=孤独に耐える資質がある者でないと、トップにはなれない。
・トップとして重要なことは、「ここでの主人は自分だ」という認識を組織に所属する人々に徹底することだ。⇒当然、このような行動を取れば、部下はトップの恣意を恐れる。⇒裏返すと、部下から恐れられないようではトップではない。
・政治家がリスクを冒して、何か行動するときの動機は、究極的に名誉か利権に収斂する。
・歴史に名を残す政治家は、誰もが物語をつくる才能を持っているのである。
・政治家が頭作りをするのに重要な二つのタイミングがある。
- まず、何も情報がないところで、最初の見取り図を与えて頭作りするとき。
- それから、会談でも演説でも、政治家が発言する前の最後の瞬間にする「耳打ち」⇒とくにこの「耳打ち」は重要である。⇒そして、有力な政治家は、ほんとうに信頼する者にしか「耳打ち」をする機会を与えない。
・人間は欲望をもつ存在だ。その欲望にどのように付け込んでいくかが交渉術の要諦なのである。⇒人間には、さまざまな欲望がある。性欲、金銭欲、出世欲、名誉欲などさまざまな欲望がある。⇒相手の欲望にどのように付け込んで、こちら側に有利な状況をつくるかということだ。