【書名】陰翳礼讃
【著者】谷崎潤一郎
【発行日】1975年10月10日
【出版社等】発行:中央公論新社
【学んだ所】
・日本の厠は実に精神が安まるように出来ている。
・西洋の方は順当な方向を辿って到達したのであり、我等の方は、優秀な文明に逢着してそれを取り入れざるを得なかった代りに、過去数千年来発展し来った進路とは違った方向へ歩み出すようになった、そこからいろいろな故障や不便が起っていると思われる。
・日本の漆器の美しさは、ぼんやりした薄明りの中も置いてこそ、始めてほんとうに発揮される。
・美と云うものは常に生活の実際から発達するもので、暗い部屋に住むことを余儀なくされたわれわれの先祖は、いつしか陰翳のうちに美を発見し、やがては美の目的に添うように陰翳を利用するに至った。
・われらの祖先の天才は、虚無の空間を任意に遮蔽して自ら生ずる陰翳の世界に、いかなる壁画や装飾にも優る幽玄味を持たせたのである。
・見えないものは無いものであるとする。
・人間は年を取るに従い、何事に依らず今よりは昔の方がよかったと思い込むものであるらしい。
・われわれの皮膚の色が変らない限り、われわれにだけ課せられた損は永久に背負って行くものと覚悟しなければならぬ。
・精神にも崇高なる精神と云うものがある如く、肉体にも崇高なる肉体と云うものがある。