「そんなに悪いことばっかりするなら、歯医者に連れて行って歯を抜いてもらうよ!」
最近はこのような叱り方をするお母さんも少ないと思いますが、歯医者ってイヤなものですよね。
でも近年はむし歯や歯周病を予防するために、定期的に歯科医院を受診する時代です。
経験されたことがある方は忘れることができないと思いますが、大きなむし歯による痛みは夜も寝られないほどの激痛です。
歯医者に行くのはイヤで仕方がないけれども痛みから解放されたくて大きな一歩を踏み出して来院される方は大勢いらっしゃいます。
そのような苦しみを今後経験したくない、自分の子供にも経験させたくないと考えていらっしゃる方も少なくないでしょう。
そのために、「むし歯とは何か」「なぜむし歯が出来るのか」、そしてむし歯を予防するために「自宅でできる事」と「歯科医院でできる事」の双方を、歯科医師として徹底的に解説いたします。
ここで書かせて頂いたことは必ず皆さまにもあてはまる内容ですので、膨大な情報量にはなりますがぜひご理解を深めて頂き、むし歯の痛みや不安と無縁の生活を送って頂ければ幸いです。
まずここでは「むし歯」とはいったいどのようなものなのかを解説いたします。
「むし歯」という言葉は幼児でもみんな知っているくらい身近な言葉ですが、「むし歯」とはどのような状態の歯なのかを説明できる方は非常に少ないように感じます。
むし歯を予防するためには、まずむし歯そのものについて理解を深めて頂きたいと思います。
1-1 むし歯とは
「むし歯」とは「歯面に付着した細菌が作り出す酸により歯質が溶かされてしまった状態」の事を指します。(医歯薬出版 デンタルハイジーン別冊 歯科衛生士のためのカリオロジー参照)
もちろん進行していくと穴が開いてしまったり、原型を留めないほど崩れてしまったりもしますが、初期の状態でわずかな白濁だけでも「むし歯」に含まれます。
1-2 脱灰と再石灰化
「脱灰」とは「歯を溶かすこと」、「再石灰化」とは「溶けかけた歯を再び固くすること」です。
そして「脱灰」を引き起こすのが主にむし歯の原因菌であり、「再石灰化」をもたらすのが主に唾液です。
「むし歯」をご理解いただく上で、この「脱灰」と「再石灰化」のふたつはかかせません。
この脱灰と再石灰化は互いに相反する効果をもたらす現象ですが、どちらも歯が口の中にある限り24時間いつでも発生している現象です。
この脱灰と再石灰化の働きが同じ強さで働いている時は、歯に何の変化も起こりません。
しかし脱灰の働きが、再石灰化よりも強くなると、歯はどんどん溶け始めむし歯が進行していくことになります。
その反対で再石灰化の働きが、脱灰よりも強くなると、むし歯になりかけてしまった歯が修復されていきます。
どちらも常に発生している現象ではありますが、「脱灰」をできる限り抑えて、「再石灰化」をできる限り手助けすることが、むし歯予防の根底であるとご理解いただければ幸いです。
(医歯薬出版 口腔保健・予防歯科学 参照)
1-3 むし歯の進行ステージとそれぞれの対処法
むし歯のステージ | CO | C1 | C2 | C3 | C4 |
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対処法 | 予防 | 予防 | 修復処置 | 神経の処置 修復処置 | 抜歯 |