日本の迷走は,いつまで続くのか? | 線路の外の風景

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 2019年11月1日。この日だけで,日本の将来を左右する重大な決定が,なんと2つも行われました。

 1つ目は,来年行われる東京オリンピックのマラソンと競歩について,東京ではなく札幌で行われることが決まったことです。

 

<参照記事>

五輪、マラソンと競歩は札幌開催 小池知事「合意なき決定」(共同通信)

 
 2つ目は,来年度から導入される予定だった,大学入学共通テストの英語民間試験活用が延期になったことです。
 
<参照記事>
 
 この両者は,全く別の分野に関する決定ですが,両者に共通しているのは,もはや救い難いと評するしかない,日本政府の迷走ぶりです。
 
 マラソンの札幌開催自体は,建前上日本政府ではなくIOCが決めたことですが,北海道出身である五輪相の橋本聖子氏が札幌開催に前向きであったという報道もあることから,日本政府が開催地変更に一役買っていたことは,ほぼ間違いないでしょう。
 しかし,オリンピックの約9か月前になって,突然マラソン競技の開催地を変更するのは前代未聞の事態であり,しかも札幌のどこでマラソン競技を開催するかは,これから決めるというのです。正式決定前に行われた報道によれば,マラソンの公認コースを計測して国際陸連の承認を受けるには,通常1年以上の期間が必要とされており,しかも冬季は雪のため事実上計測が出来ませんから,常識的に考えれば,来年のオリンピックには準備が到底間に合いません。
 しかも,日本側は大通公園を発着点とする案を軸に検討を進めるつもりのようですが,札幌ドームを発着点にしたいとするIOC側との調整も行われていません。今後も,具体的な開催地,開催日程等をめぐる迷走が続くのはほぼ確実であり,またかなりの確率で,マラソンの札幌開催は準備が間に合わず,大会直前になって「やっぱり東京に戻すしかない」などと騒ぎ出すことになるでしょう。
 週刊ポストが報道しているとおり,マラソンの札幌開催が日本政府側の打診により決められたことであれば,おそらく日本は来年の東京オリンピックで世界に恥を晒すことになり,国際的信用を失墜させることになります。日本の政治家には,小池都知事をいじめることさえ出来れば,後は野となれ山となれといった発想しかできない,頭の悪い人間しかいないのでしょうか。
 
 そして,英語民間検定試験の活用については,管理人も前ブログで反対論を展開していたことから,実施が延期されたこと自体は良かったと思いますが,これまでどんな反対論にも耳を貸さなかった文科省が,おそらく萩生田大臣の失言を契機として,実施の前年になって突然延期を発表したことにより,教育現場に多くの混乱を引き起こすことは必至でしょう。民間検定試験の活用を決めていた各大学は,選抜方法の変更を余儀なくされ,再来年以降の大学受験に臨む高校生たちも,既に大学共通テスト用の検定実施準備を進めていた各団体も,大きく振り回されることになります。
 センター試験に代わって実施される大学入試共通テストに,英語の民間検定を活用するという制度については,地理的な事情で民間検定試験を受験しにくい地方在住の受験生たちに不利益を与える,経済的に苦しい受験生に不利益を与えるといった問題点がクローズアップされていますが,実際の問題点はそれだけにとどまりません。
 実施団体も出題方針も異なる各民間検定の成績を公正に評価できる方法はなく,文科省が決めたCEFRという評価基準は,ヨーロッパで採用されている同名の基準をさらに劣化させた,極めていい加減なものに過ぎません。そのため,これを問題視した東京大学は,一応民間検定試験の「活用」を決めたものの,その活用方法なるものは,受験要件にA2(英検なら準2級)相当以上の民間検定合格か,A2相当以上の英語力があることを証明する出身高校の内申書か,そのいずれも提出できない場合にはその旨の理由書を提出することを義務付けることにし,いずれの方法に依った場合でも合否判定には一切影響しないという,実質的には「活用しない」と言っているも同然のものでした。
 センター試験に代わるものとして,共通テストの実施準備を進めていた文科省関係者の頭には,試験の公正を確保するという発想が全くと言ってよいほど無く,そのため共通テスト,特に英語の民間検定活用には多くの反対論があったのですが,文科省はいかなる反対も押し切る積もりかと思いきや,政治的危機に陥ると土壇場で態度を翻し,教育現場に無用の混乱を招くだけの結果を招きました。
 法科大学院といい,新国立競技場の着工挫折といい,明らかに問題のある加計学園の獣医学部新設認可といい,今回の民間試験活用やその延期といい,文科省のやることにはろくなものがありません。いっそのこと,頭の悪い人間しかいない文科省は一旦解体した方が良いのではないでしょうか。
 
 日本政府の無能ぶりを露呈する,今後大きな混乱を招くこと必至の重大決定が1日に2つも行われるのは,まさしく異常事態であり,こんな政治が続くようであれば,令和時代における日本の迷走と凋落は,おそらく平成時代よりもっと酷いものになるでしょう。管理人としては,今後の就職活動を控えあまり政治的な話題を口に出したくはないのですが,ここまで政治が酷い状況では,そうも言っていられません。
 日本は民主主義国家ですから,主権者は日本国民であり,そのため政治の劣化に対する責任も,究極的には日本国民にあります。私たちに出来ることは,出来る限り政治に関心を持ち,少しでもマシな発想の政治家を応援することくらいしかありません。日本政治の劣化を食い止めることの困難さを考えると,管理人も暗澹たる気分にならざるを得ません。