ナスのジュリエット | 栄作文

栄作文

斎藤栄作の文

一日中部屋に籠り、執筆をしている。

 

楽しみといえば、娘が学校から持ち帰ったナスの成長を見守ることくらい。最初はグッタリと垂れ下がった葉っぱだけだったのが、水をやると花を咲かせ、遂には小さな実をつけたのだ。

 

栄作「おい、ナスの実が生ったぞ」

娘 「え?本当に?」

栄作「見ろ、ホラ!ここ、小さいのが」

娘 「ホントだ〜」

栄作「パパが毎日お水をあげたからだよ」

娘 「じゃあ今日は私があげる」

栄作「え?……いやいや今日はもうあげたから」

娘 「いいじゃん、またあげても。コレ、私のナスだよ」

栄作「……」

 

突然、シェイクスピアの物語に出てくる乳母の気分になったよ。これまで懸命にジュリエットお嬢様を育ててきたのは私の筈なのに。そんな訳でナスは勝手にジュリエットと名付けられた。