5mmのズレで人は腕を失う | 栄作文

栄作文

斎藤栄作の文

突然、リビングに敷いてあるラグマットが気になった。

ほんの少しだけズレてる。
5mmくらい。
私はその5mmが気になる、ちょっと面倒な一面を持ち合わせていると自覚している。(←イバる話じゃない)

ラグの上には大きなテーブルが、どっかと乗っている。テーブルは、それ自体を持ち上げる事は1人では不可能な程重い。だがたった5mmの為にどかすのも何だ。それをどかす働きで5mmのズレが1cmに変わるやもしれない。更に言うなら、綺麗に整え戻したら、またまたそれで5mmズレてしまうかもしれない……はい、ただの横着者である。

で。

結局たった5mmのズレならば「えい!!」と引っぱれば済むだろうとタカを括り、文字通り「えい!!」と引っぱった。

その瞬間。
私の胸筋が「イヤーーっ!!」と悲鳴をあげた。
過去、こんな痛みを感じた記憶はない。私は言葉を失い、その場に崩れ落ちた。まるでウォーズマンに両腕をもがれたテリーマンのようになり、30分くらい動けなくなったのだ。

宇宙では2mmの誤差で人は命を失うと聞くが、地上では5mmのズレで人は腕を失うという言葉が生まれた瞬間のお話でした。