『失われし銀河の天使 ~ エルフィア ~』は、読者のみなさんはもうとっくの昔にご存じだと思いますが、全編、半端じゃなく徹底的に会話形式です。
もちろん、キャラを生き生きとさせるために、わたしが意図的に行ったことなんですが・・・。
当初の構想では、わたしはこれを意識していなかったのですが、書いているうちに思わぬ効果を生み出していました。
それは、予想外に書き手が後ろに回っている感じになっていて、各キャラたちの言葉がストーリー上では事実として語られているんですよねぇ。
例えば、ある場面を描写するにしても、会話の中でするのと、ただただ描写文を書くのとでは、受け取る感じがまるで違ってきます。
とことん客観的な文で読者を魅了するハードボイルド小説では、徹底的に事実に対してだけの描写文にこだわり、キャラの気持ちや感覚をダイレクトに書き表しません。
――― 男は恐怖を感じながらも銃口を魅入られていった。
なんては書きません。
「恐怖に震える」とか「魅入られていった」とかは、心情を表している文だからです。
――― 男の身体は振え、目は見開かれ、銃口に吸い寄せられていった。
こんな感じんですが、実は、その描写文こそが書き手の意図丸出しなような気がするんです。
――― 男は銃を片手にすると相手に狙いを定めた。
がハードボイルド的描写です。
男の気持ちも狙われた相手の心理も書かれていませんね。
でも、この短い冷徹な描写で「冷徹さ」を訴えているわけで、よくわかります。
どんな小説でも心理描写がないなんて、ちっともわくわくしませんから。
で、このお話の表現はこうです。
――― 「覚悟するんだな・・・」
――― かちっ・・・。
――― 「ひぃっ・・・!」
説明文は「かちっ・・・」という銃の撃鉄を起こす擬音のみです。
ちなみに、その後続く「・・・」で、そこがある程度の空間でエコーしているとか、間を空けて相手を恐怖に叩き込んでいるといった感じを持たせようとしているわけです。
「・・・」はなにもないのではなく、場面場面で心理描写をしているというわけです。
ハードボイルドは文で情景を描写していますが、このお話では会話文の中でその緊迫感を出そうとしています。
その中に、書き手のわたしは完全に埋もれています。
ということなんですね。
このお話、基本ラブコメで、まぁ、ぶっちゃけた話、マンガみたいなもので、いたるところに読者のみなさんが笑い転げたり、含み笑いしたり、そういった楽しいものに仕立てたかったんです。
つらつら、説明やら描写やら続けていると、とにかくスピード感がないし、臨場感も違います。
さっと読んで、あははと笑う。
こういう漫才にも似たテンポが欲しかったわけです。
60年代のアメリカのテレビ・コメディーは秀作ぞろいです。
その中で、特にわたしのお気に入りは「I dream of Jeannie、邦題:可愛い魔女ジニー」でみなさんもご存じの方もいらしゃるでしょう。
このプログラムは数分おきに、いろんなギャグのオンパレードで、可笑しなシーンではバックにお笑い役の笑い声が流されます。
このスタイルをどうしたら、小説に取り込めるかを試したのが、このお話でもあるんですねぇ。
以前、このお話の基本ストーリー変更を最低4回はしたことを書きましたが、お話の書き方についても、場面状況を徹底的にキャラの会話の中で行うことで、会話方式への変更をしたわけです。
また、一方、このお話は近未来を扱ったSFでもあります。
わたしもみなさんに科学的事実を突っ込まれても答えれませんので、あんまりウソも書けません。
あは・・・。
そういうわけで、わたしも科学雑誌「ニュートン」は毎月目を通していますが、ここに掲載された最新の科学の成果には驚嘆し続けています。
当然、このお話を構成する上でも随分と参考させていただいてもいます。
超高文明世界のテクノロジーについても、このお話の中では随分まじめに取り上げている場面もありますので、そういったことで、単に、説明文ばかりにすると、読みづらくなるんじゃないかと思ったわけです。
実際、わたしは最初そういった場面描写や心理描写を会話文でなく、描写文で書いていましたが、とにかく見づらい・・・。
4行、5行、文を連ねるだけでも、文がとっても取っ付きにくくなってしまったんですね。
それで、急遽、描写場面をキャラたちに語らせてしまえば・・・、こりゃ、ちょっと変わった感じになるぞ・・・、と思ったわけです。
それで、お話のプロローグも、各お話の前書きも、「可愛い魔女ジニー」に倣い、すべてエルフィア人のアンニフィルド語らせることにしました。
前書きはアンニフィルドの言葉です。
例えば第374話ですが、その前書きはこんな調子です。
「みなさん、おはようございます。アンニフィルドです。しばらくごぶさたしていたエルフィアなんだけど、とんでもない動きがあったわ。フェリシアスの言葉が意味することは委員会の存在を揺るがす大事件になるかもしれないの。エルフィアもカテゴリー4だけど、その実、内部から徐々に蝕まれていたのかもしれないわ。そうは言っても地球の支援はやめるつもりないからね・・・」
これ、全部書き手のわたしが書いていることなんですが、登場キャラの「アンニフィルドの言葉」として語られています。
だからキャラが言ったという「事実」となるんであって、書き手が直接そう言ったということを後ろに追いやっているんですね。
おわかりでしょうか?
これを状況説明的にすると・・・。
エルフィアについての近況に関し、とんでもない動きがあった。フェリシアスの言葉が意味することは委員会の存在を揺るがす大事件になるかもしれなかった。エルフィアもカテゴリー4ではあったが、その実、内部から徐々に蝕まれていたのかもしれないのだ。しかし、アンニフィルドたちは地球の支援を止めるつもりない・・・。
と、まぁ、こんな風になります。
ちぃーーーとも面白くない。
客観的に状況を記述してありますけど、全部、書き手としての「わたしの言葉」です。
書き手としての立場はあくまで主観的なんです。
その時、わたしは自分をもっとお話から消したかったのかもしれません。
それに、マンガでは常識の擬音効果もこのお話では重要な役を担っています。
今まで言ってきた客観を擬音を使うことで「書き手のわたし」を消し去っているからです。
もちろん、これらだけでは、お話はスカスカになる危険性がありますので、その都度状況描写文も盛り込むようにしています。
このお話しは、わたしの実験場でもあり、そういった効果をみなさんが感じてくださっているのなら、大いに満足です。
臨場感やキャラの特徴を持たせないなら、キャラに大いに語らせることだと思います。
キャラに語らさないで描写説明だなんて・・・。
あーーー、もったいない!
せっかくのキャラたちに活躍の場が奪われてしまいましたよね。
と、今のわたしは感じてしまうんですが・・・。
あは。
そういうことで、このお話は徹底的にキャラたちに命を吹き込んでいます。
ですから、みなさんのお気に入りのキャラがいたら、可愛いがってあげてくださいね!
※ノリックの『失われし銀河の天使 ~ エルフィア ~』 本編は『小説家になろう』に連載中です!
