我が子と家に帰ってきてから1年間
風邪ひとつ引いていなかったチビ達
我が子のお誕生日の夜
ひどい咳き込みと
10回以上の嘔吐
陥没呼吸
急激に体調が悪化する妹の状態を見ながら
んー…朝まで待てない…
♯8000は相変わらず繋がらない
当番病院は…県立病院か
我が子がお世話になった大学病院に
なかなか足が向かない気持ちを
ぎゅっと仕舞い込んで
子供第一
この子のカルテがある大学病院に行こう
決意した
主人を起こして
弟を母にお願いし
白み始めた空の下、慣れた道を行く
日付が変わって
我が子がお空に行った一年の日と
なっていた
なんでこんな日に…
それでも救急で対処してもらって
午後には家に戻るつもりで
しかしSpO2が90を切る状態で
吸入しても上がらず
結局小児科に引き継がれる事になり
お兄ちゃんの血小板アレルギーの時にも
お世話になったドクターが
お久しぶりです、お父さん、お母さん
丁寧に挨拶してくれた
選択肢を提示された
この病院に入院するか
他の病院に入院するか
…外来の選択肢はないようだった
一気に私の心拍が上がる
まさか入院とは思わずここを受診したが
入院となるとあの病棟に足を踏み入れる事に
小児病棟行きのエレベーターホールにも
近づけなかったのに
ウソでしょ
なんの試練よ、これ
頭と、心の中がぐるぐるだった
輸液の点滴と吐き気止めの座薬をして
座れるくらいになった妹を
救急部のスタッフが車椅子に乗せて
どんどん廊下を進んで行く
3年以上もいた病院だから
どれくらいでエレベーターホールまでつくか
下を向いていてもおおよそわかるが
職員専用廊下を通ったもんで
思った以上に早く着いてしまった
え
と思ったらエレベーターに
あ
と思ったら
小児科病棟の前に来ていた
なんだかデイルームが
すごく
狭く感じた
こんなんだっけか
流れに乗って
下を向いたまま
我が子が再発した時
歯を食いしばって踏み入れた入り口を
跨いだ
前を向けなかった
すれ違いざまに
肩をポン、として行く看護師さん
顔を上げると
病棟保育士さんがいて
「よく入ってこれましたね」
と、肩を抱いてさすってくれた
ゆっくり見ると
我が子が転院のとき最後に
病棟スタッフと写真を撮った場所
グワっと気持ちが動き
一瞬、眩暈がした
奥歯を噛んだ
辛かった
なんでだろ
なんで我が子は居ないのに
私はここにいるんだろ
通された病室は
転院前に我が子と居た
思い出いっぱいのお部屋だった
違うのはベッドに寝ているのが
小さな妹だ、ということだけ
変な違和感を感じて
気持ちがフワフワ不安定だった
とにかく入院準備をするのに
私の方が分かるからと
主人に病棟内に入ってもらい
一度家に帰った
家に着くまでふわふわしていたのだが
我が子の一年を
朝から過ごしてくれる予定だった友が
そのまま家に来てくれていて
入院準備を手伝ってくれた
(さすがの戦友)
ババっと荷物を詰めて
いただいた沢山のお花を母にお願いして
病院に向かった
そうだ
途中のドラッグストアで
少し買い出しをしよう
カートを押して歩く足取りは
実に早くて
そこからの私は
むしろウキウキする気分になっていた
久しぶりの感覚だ
Sちゃんの元へ
駆けつけるようだった
病棟に戻るまでの一連の動きは
家で家事をしているより
よっぽどスピーディーなことに気付いた
ただいま!
Aちゃん!!
病室のドアを開ける
Aちゃんと分かってても高い声が出る
すっかり落ち着いた妹の病室に
懐かしい病棟スタッフや
我が子の主治医が訪れてくれる
主治医は
「Aちゃんの名前を見た時
お母さん辛い気持ちがあるでしょうし
何とか入院にならないよう
願っていたんですが…
でも
これが転院以来の出会いだったら
結構緊張していたと思います、僕」
ホントにそれは
私もで…
病棟保育士さんがすぐ出迎えてくれたのも
その日日勤ではなかった
元プライマリーナースさんが
Aちゃんが行くから
ママしんどいだろうから
と連絡をしてくれていたと後で知ったり
医療者のみなさんの配慮に
少しずつ
病棟にいる緊張感がほぐれてきた
地雷だった
モニターや、聴診器も
ドキドキしなくなってきた
いつも持ち歩いている
我が子の写真を
病室に置いた
しっくりくる
Sちゃん
ただいま、だね
ここに帰って来たかったんだもんね
しばらく
懐かしい第2の我が家で
過ごしますか
Aちゃん、守ってね
寝顔やぷくぷくした手が
初発の時のお兄ちゃんにそっくり