気が重かった


俗に言う命日に悲しめばいいのか

この日にエネルギーを使うべきなのか

よくわからなかった


この日に向かうにつれて無口になって

主人には

扱いにくい、と思われてたんだろな


でも一年前に

できなかったことも

しっかりやってやりたくて

お膳や、お団子を作った


義母に教えてもらい

お団子を事前に練習したり


おままごとみたいな小さなお椀に

なるだけ好きなものが乗るよう

材料をあれこれと吟味した


高月に盛る和菓子も

あんこが苦手な我が子でも好きそうな

夏らしく、可愛らしいものを

実母と選びに行った



こうして必死になる事が

気を重くする原因だと

思われていたかも知れない





でも

やれることは

やってあげたいよね





そうしなきゃ

いられないんだよね









誰かが、この一年を

『あっという間』だと言ったら

絶対一言言ってやる、と思っていた


なかなかに楽なお寺さんをお迎えした時

家に入った途端に

「一年、早いですねぇ」

と言われ

あまりに早い攻撃(と思ってるのは私だけ)

反撃のタイミングも逃し

気持ち的にコケていたら


お寺さん

なんと

木魚を忘れた、と言うのだ


もちろんご自宅にある所もありますが

大概持ってきてくれるのです


 え…

 Sちゃん、打楽器大好きなんだけど

 こんな大事な日に?

 待ってるから持ってきてくれないかな

 いや、なんなら今から買ってきますけど…


心の中で葛藤してたら



 「…木魚なしで、やります」



チーンチーンチーン



お布施から一枚抜いたろかな、と

思った瞬間だった






※※※※※


そんなこんなで始まった法要なのだが

腹立たしいという気持ちはなく

予想を遥かに上回る出来事に

逆に落ち着いてお経を唱えていた


弟妹は30分のお経の間

じっとできるわけもなく

じぃじばぁばの間をちょろちょろしたり

トイレに行ったり

喋ったり


弟のバタバタがひどかったので

何回か嗜めたが

無効


もう諦めて

お経に集中することにした




経文を見ていると

我が子の顔が見えてきた


一年前を思い出したというより

お経の内容を感じ取っていたら

頑張り抜いた我が子の姿が蘇ってきた


読み上げながら

我が子の人生の節々に触れた


命に向き合って

まっすぐの心で人と接していたSちゃん


もちろんあなたは

母の人生の道標だと




そう思っていたら

涙がどんどん出てきて




すると

バタバタしていた弟に

変化が起こった




じーっと私の顔を覗き込むと

スッと座って

経本を開き


「どこ読んでるの?」


と聞いてきた



ひらがなが読めるようになった弟

ふりがなが打ってあるのでわかるはず

今読み上げている所を指でなぞる


速度が速いので

ついてはいけないのだが

それ以降、静かに座っていた



お経が終わって

弟、立ってどこかへ行ったと思ったら

ティッシュ箱を持ってきた

私の顔をゴシゴシ拭いて

頭をなでてくれた




前日に


「前はさ、お母さん

 Sちゃんの写真とか見てさ

 いつも泣いてたのに

 最近泣かないよねぇ?

 どうして??」


と言っていたばかりだった


 うーん…そうだねぇ…


とだけ言って


 君が寝てからは

 大体泣いてますけどね


と心の中で言っていた私


実際、今は

Sちゃんの元気な時の写真すら見れない


昨日の今日で何を思ったかわからないが

お兄ちゃんを彷彿とさせる優しさ




ありがとう






午前中早々に法要は終わり

午後からチビ達は

いつも通りプールタイム


家の中で

2人が戯れる声を聞いていると



Yくんの声

Sちゃんにそっくり…



お兄ちゃんも

大声出してはしゃいでいた時

ほんとにそんな感じだったよ



プールを始めると

不思議と蝶々が

今日はYくんの周りをクルクルクルクル

飛んでました





Sちゃん

今月は激務ですなぁ

大変かもしれないけど

やっぱり

たくさんたくさん

こちらにやって来てね



次はあなたの

誕生日だ