一年前の今頃は…

と思いを馳せるのは

人間だけなんだろうか


動物や木や植物は

ちゃんと一年たって春になったら

活動し始めたり

芽吹いたり

花を咲かせたりするけど


一年前のことを思う事は

ないのだろうか





一年前の4.15

我が子を連れて

最後の治療をするために

転院した日




最後の治療とは

もちろん

これで憎き白血病とおさらばするため



遠ざけても

遠ざけても

これ以上の努力はできないほどがんばっても

ヤツはやってきて

日常の小さな幸せを一瞬で掻っ攫って行く



ヤツを根絶させるために


ずっと5人家族でいるために


転院を決意した




でもその考えは間違っていたんだろうか

我が子は仏様のように優しくて

ケンカなんか大嫌いだし

病気を無くそうとすることが

違っていたんだろうか




あの日も今日みたいな

いい天気の日だった


家族と友達が見送りに来てくれて

弟妹が泣きながら車を追いかけて来たのを

温度とか風とかも一緒に覚えてる


「いってきます」


と言って地元の病院を発ったのが

最後になってしまった





あの時に、5秒でいい

時空を捻じ曲げて

戻れないだろうか



私が私の

肩を叩いて

首を横に振ったら

あの時の私は察してくれるだろうか



それでも私は

行っただろうか



わかってる



こんなこと言って

治療の道をつなげてくれたみなさんに

失礼だということも

あの時行くのをやめても

次の治療の道を血眼で探したことも

たとえ今の記憶を持ったまま戻ったとしても

緩和の道は

違う苦しみと絶望が待っていることも



私は

 あの道が最善の道だった

と慰めて欲しいのだろうか

 行くべきでなかったと

ズタボロになるまで言って欲しいのだろうか



でも

 あんな治療をさせてかわいそう

とか

 地元で過ごさせてあげればよかったのに

とか言われるのは

絶対イヤで



骨髄移植の1データとして見られるのも

絶対イヤで

病気になってかわいそうとか思われるのも

絶対絶対いやで

 


それならここに書くなという話だけど



私の発言は池江選手みたいに

社会に影響を与えるものではないし


このどうしようもないぼやきを

吐き出したい気もするし


治療を選んで厳しい結果となった方が

誰か1人でも

一緒の気持ちだと思って欲しい

甘え?期待?もあるし




病院に着いた夜

赤っぽい電球の下で

ものすごい不安にかられて


前夜2時間ほどしか寝てないのに

高速を緊張しながら三時間以上運転したのに

目が冴えて


全然寝られなくて

不安と怖さで押しつぶされそうで



我が子と世界に

2人きりしか居ないみたいな感覚で







あぁ…それでもいい

誰もいなくて

我が子と2人で

先にも後にも時間が進まず

ずっと一緒に

あの子と一緒に





時空を捻じ曲げるのが無理なら

時を止めて欲しかったな







きっと大切な人を見送られた方が

みんな思ってる


みんな思ってるのに

不可能な事





でも

思うのは勝手だから思う





あの時こうしていれば


転院しなければ


もっと早くから免疫アップ術をすれば


心不全の可能性に早く気づいていれば


移植前の寛解導入を別の方法でしていれば


敗血症になるまでに気づけていれば


付き添いを24時間できていれば


診断をもっと早く受けていれば


あの子にもっと大きな心で接していれば


小さな話ももっと聞いていれば


授乳中食べ物に気をつけていれば


妊娠中仕事を無理しなければ







とめどなく戻して欲しい時点が

蘇ってくる




そんなこと思ってもどうしようもない?



でも思ってしまう





だって

母親なんだもん




我が子に何かしてあげたいんだもん




頭の中で蘇ってでも

何かしてあげたいんだもん









あの子を

取り戻したい










ダメだ


今日は
















※※※※※



「献血に行ってきました

 Sちゃんに

 背中を押してもらったおかげです」


と連絡をくれる方がいる




仕事終わりに連絡をくれる友がいる




今日の予定に『ガンサロン』とあって

ホッとする自分がいる







サロンで作った南天九猿

「難(南)が転(天)じて苦(九)が去る(猿)」

南天の木の上に

フウセンカズラの種でお顔ができた猿が九匹



このフウセンカズラの種は

我が子と育てて採ったもの


まさかこんな出番があるとは…



「1番前がSちゃん」

と、言ってくれた友達


闘病したドイツの

こどもホスピスに送ってくれるという




海を越えるのか…我が子よ

行っておいでー









あたたかい気持ちに

助けられた日





今までの8ヶ月半

ずっとそうだった










ありがとう