三学期にできなかったそろばんを
春休みにやりましょうか、と
院内学級の先生が言ってくれた。
学校にもありますが、ご自宅には?と
聞かれたので

「あります!」

即答した。

私は小学校6年間そろばんを習っていて
大事に大事に使ったそろばんが
家にあった。

我が子が自分のモノを使ってくれるなんて
テンション上がるーー⤴️

我が子に渡したら

「ちょっと新幹線のネームシール
 取って!」

と言われた。
なぜか3枚も書いている。

貼り終わるまで見せてくれなかったのだが

「ジャーン!見てーー。」
真ん中に私の名前が彫ってあるそろばんに
自分、弟、妹
3人の名前を書いて、貼ってくれていた。

「ボクが使った後は
 Yちゃんと、Aちゃんが
 大事に使えるようにね!
 3人使ってくれたら
 お母さん嬉しいでしょー。」

うぅ…嬉しいなんてもんじゃないよ…

弟妹の愛をしっかり受け止めるように
そこに我が子の大きな愛があった。



※※※※※

セカンドオピニオンは
安倍首相の最初の会見直前だった。

向こうの病院から
コロナがご心配でしたら
日を改めても大丈夫ですよ、と
前日に連絡を頂いたのだが、

「あの、行ってもいいですか…?」

と弱々しく尋ねた。
来るなって事かな、と
ちょっと思ったからだ。

「そちらが良ければ!
 こちらの病院では感染者は認められて
 おりませんし、先生が、
 ご両親、何としてでも行かないと
 と思ってるなら連絡してあげて、
 とおっしゃってたので。」

先生から…お気遣いに感謝だ。
しかし、延期していつ行けるか
わからなかったので向かうことにした。

難しい話を聞くので電車で行く予定だったが
やはり車で行くことにした。
万が一コロナを持ち帰っては
洒落にならない。

「帰り、私ら
 どんな顔して車に乗ってるんだろ。」

ポツ、ポツと私が話すだけで
車の中の会話はほとんどなかった。



途中、一回トイレ休憩をしただけだったので
O病院に着いたのはナビの時間通りだった。
予約時間までは1時間以上あった。

受付をして待っていると係の方が来た。
「12:30から先生空いてるそうなので
 お昼でも召し上がって
 都合の良い時にいらしてください。」

予約は13:00。
京都でのセカオピは
最大90分まで延長できたが
こちらは45分間と決まっていた。

30分早く行けば、
その分話が聞けるかもしれない
主人と12:30には戻る事にして
初めての病院内を散策した。

「なんか食べないと。
 おにぎりでも買うか?」

主人が院内コンビニに目配せして
言ってくれたが
とても喉を通る気がしない。

だって、あと数十分後には我が子の運命が
言い渡されるかもしれないのだ。
地元の主治医からは
門前払いもありえる、と言われていた。

でもなんか食べて血糖値上げとかないと…
コンビニに入ると
主人が
「飴は?」
と提案してきた。

なるほど!いい!
アメ、アメ、アメちゃん、アメちゃん…
慣れないコンビニで、
しかもパニクっているので
全然見つけられない。
するとレジ前にキャラメルがあった。

「…キャラメルだ!!」

2人声を揃えて、キャラメルを一箱買った。

主人の口に放り込んで、自分も食べる。
キャラメルなんて、何年ぶりだろう。
甘いな、美味しい…

歯にくっつくキャラメルを
舌でこそぎ取りながら
12:30ぴったりにセカオピ窓口に戻った。