土曜日、我が子は10歳になった。
最近は1/2成人式とも言うらしい。
10年…感慨深い。

我が子が生まれた日も、
同じように尋常じゃない暑さで、
空は真っ青だった。
初めて授かった我が子の、あまりの小ささに、
なんて責任重大なモノを授かってしまったんだろう、と身震いしたのを覚えている。
しかし、それ以降、
我が子は私の人生を大きく変えてくれた。
人生を変えた、というより、
モノの見方を完全に変えてくれたのだ。

居てくれるだけで、
その存在に無償の愛を捧げられる。
我が子が話し出せば、その視点に驚かされ、
世界がどんどん広がっていく。

我が子が生まれるまでは、自分が一番だった。
自分の為に必死に頑張ったし、
頑張った分自信があった。
でもそれが意外にも、
ものすごく小さな世界だったことに気づいた。
いまは自分以外の人の為に働く事が、なんと自分自身を充実させてくれるのだろうと痛烈に感じている。

我が子の誕生日だというのに、自分の事をペラペラ述べて、まだ〝自分が一番〟根性が居座っているが、
誕生会はお休みに重なり、たくさんの人がお祝いに駆けつけてくれた。
前日には病棟スタッフでお誕生パレードをしてくれ、病室が人でパンパンになった。
部屋はプレゼントでいっぱい!
しかし、チビが欲しがるのを心配して、我が子は

「これ…誕生会で開けるの?
みんなで遊ばないといけないよね。」

と聞く。
破壊王の弟は新しいオモチャを開けるや否やもう使えないモノにする天才なので、

「オモチャは病室でゆっくり開けな!
パーティはみんなでゲームしたり、
ケーキを食べて楽しみましょう。」

と言うと、やっと安心した顔になった。
ご苦労やな、お兄ちゃんは。

飾りつけを施したファミリールームに、家族を呼んだ。
今回は新聞紙玉入れと、宝探しゲームだ。
傘を逆にして中に新聞紙を丸めて投げ入れるのだが、2歳の妹もキャッキャ言いながらできた。
長男も夢中になり投げ入れていた。久しぶりの運動量だったからか、疲れた…とすぐ息切れをする場面も見られちょっと心配に。

メインイベントは宝探し。メッセージカードが部屋の至る所に隠してあり、指示通りに進めば宝にたどり着ける!

「えー⁈ソファの…下?
…んー…、あ⁈あったー!!
今度はー…、え?車イスの後ろ⁈」

お兄ちゃんが読んで、弟が動く。妹は訳が分からずついていく。
部屋の中をグルグル回って、最後にはお菓子の詰め合わせにたどり着いた。
全く一緒の内容で、3つの袋。
ケンカするからね。
たいしたもんではないが、やったやったー!と子供らしく喜んでくれる。

集めたカードは順番に並べるとあるメッセージが浮かび上がるようになっていた。
以下、こんな風に。

「Sちゃん、10さいの、たんじょうび、
おめでとう!」

昔読んだ絵本であったのだ。
カードをたどって、最後並べるとメッセージ。
これがやりたかった。いつか我が子にやるんだ!と夢見ていた。
でも、子供のウケは良くなかった。
お菓子に夢中で、仕方なくやっていた(笑)

…ん?
結局自分の為にやっている私…?
失敬失敬…

「おかあさん、
一緒に飲みに行くまであと半分だねー!
ぼく酔っ払ったらどんな風になるのかなぁ。」

常日頃から、20歳になったら、ジャズを聴きながらお酒を飲もう、と言っている。
そうか、折り返し地点まで来たんだね。
今アイスケーキを頬張っている君とお酒を飲める日まであと半分。
その日まで、
その日からも、
ずっとずっとお母さんのそばにいておくれ。

アドリアマイシン心筋症
70日間生存率、50%

我が子は発症から65日が経ちました。

区切りまであと少し。