週末は自宅に帰り、下の子達と過ごした。
たまの家の事をやりたいが故に、
どこか連れて行ってやったり、
特別な事をしてやったりが全然できていない。
なのに文句ひとつ言わない弟妹。
というか、物心ついたころから病院を行き来する生活だから、文句の付け所がわからないのだ。
妹なんか、お兄ちゃんの看病をしたい母に連れられ、生後1か月から毎日病院。
これが我が家の生活のパターンになっていた。
病院へ向かっている車の中で、ふと弟がつぶやいた。
「ぼく、Sちゃんの病気が治ってほしいんだよ。
せっかく家に帰って来たと思ったら、
また病院になっちゃうから、
悲しいんだよ。」
4歳というのは、こんなに表現力を身につけているものなのか、と感心するくらい、気持ちがバーンっと伝わってくる。
「…だよね…、ほんとにそうだよね…」
「…ぼく。
おかあさんとずーっと一緒にいたいんだよ。」
移植の時は4ヶ月全く家に帰らなかった。
これさえ乗り切れば家族一緒の生活が待ってる、と信じていた。
長男も、弟妹も、親である私達も、
とれだけ頑張っても病院に戻ってしまう現実に希望を打ち砕かれていた。
弟はくしゃっと笑う。
ムードメーカーでいっつも走り回ってパワーの塊だが、泣いてるみたいに笑う時がある。
その顔を見ると、あぁこの子にもどれだけ我慢させてかわからんな…と胸を締め付けられる。
だから、素直に寂しい、悲しい、を言ってくれると、申し訳ないと思う反面、よくぞ言ってくれたという気持ちになる。
普通の家族みたいに夏祭りには行けないけど、
病院のファミリールームでかき氷屋さんをした。
主人にかき氷器を持ち込んでもらい、
下の子らと一緒に、シロップや器を買い出しにいった。
「いらっしゃい、いらっしゃい!
氷入れ放題、シロップかけ放題だよ〜!」
お父さんに手伝ってもらって、
3人とも氷を削る。
ガーリガーリガリガリガリー
いちごやメロン、カルピス味も。
「おいしいー!
お代わりー!」
普段水もほとんど飲まないお兄ちゃんが、かき氷をお代わりした。
「ぼくもー!」
「あーたんもー!」
弟妹も続く。
ちょっとちょっと、
こんなに食べてダイジョブデスカ?君たち、と不安になりながらも、走り回って食べるちびっ子にそれどころじゃなく。
今日もてんやわんやで、
大盛況のうちにかき氷屋さんは閉店ましたとさ。
帰りのエレベーター。
「じゃ、気をつけて帰るんだよ。
お父さんの言うことしっかり聞いてね。」
何も言わず、瞬きもせず、
じーっと見つめる4つの目。
エレベーターのドアが閉まる。
閉まる瞬間、
くしゃくしゃの顔が見え、
「おかあさんとずーっといたいんだよー!
おぉー…、ぉー…、ぉ…」
泣きわめいてる声が、
下の階に飲み込まれていった。
ポロ…。
もらい泣き。
でもエレベーターのドアが開いた時には、
ケロッとお父さんと手を繋いで帰るんだろう。
強ぇからな。うちの子。
またおいで。
みんなでいっぱい遊ぼうね。