吾野緒濫人のオーディオライフに2024年1月、自作トールボーイのバックロードフォーンのスピーカーボックス用に、超高評判のフォステクスFE108solを取り付けた。評判に違わず、驚くほどの微細な音表現に感嘆した。それから1か月ほど、そこそこのエージンクによって、低音も出るようになってはきた。が、やはり、高音域の品質の高さと情報量が勝り、バランス的に低音域はやや浅い。
 緒濫人の自作のボックスは240センチほどのロードがあるが、10センチのフルレンジ一つのスピーカーで音の全域を引き出すのは至難の業である。仕方なく、バードオフで買っていたジャンクもののサブウーファーを2つ使い、デジタルアンプで100ヘルツでフィルタリングした音を足して、なんとか低音域の量感をアップして聴いてきた。
 市販のサブウーファーは、だいたいコーンが重くレスポンスが遲い。低音は出るのだが、ドロンとして重く濁っていて、音量を大きくすると不快になる。

 吾野緒濫人は、低音もレスポンスを鋭くする必要があると考えた。
 もっとも良いのは、もうワンセット、バックロードフォーンを用意して、それを低音専用として100ヘルツ以下のフィルター音を付加することだ。が、それは無理。
 そうだ! 共鳴管スピーカーなら、行けるのでは?
 幸いというか、なんと手許に、前に使っていたアルパインがある。が、ちょっと待て。じつは、さらに先代のその前に使っていて、ずっと引退させていた、フォルテクスのFE106Σがある。すでにコーンは乾燥していてボロボロ。液体がしみ出ていて無残。コーンの一部は破けてもいる。廃棄しようかと考えていた。が、音は出る。捨てるにはもったいないのである。なんと言っても、バックロード用のユニットなので、強力な磁気回路は健在だ。ひょっとして、共鳴管方式なら、低音専用で使えないか?

 共鳴管方式なら、長さを180センチ前後と120センチ前後の2セットを、二つのユニットに受け持たせておけば、120ヘルツあたりから下の音域をカバーできることがわかった。
 共鳴管方式は、ベニヤ合板で簡単にできる。が、建材のビニールパイプでもできる。どんなパイプが入手できるか、ホームセンターで捜した。
 じつは、ビニールパイプだが、そんなに安くはない。何軒かあれこれ見回っていたとき、紙製らしき管を見つけた。値段が、安いのだ。しかも軽い。丸いので、強度は十分あり、共鳴用としても問題はない。さっそく10センチ径、1メートル長を3本買った。1800円くらいだった。
 紙製らしき管は、北海紙管という会社の特殊耐水原紙を何層にも円筒に巻き上げた「ホッカイボイド」という建材だった。配線用とか、コンクリート型枠用らしい。
 
 吾野緒濫人の考えは、シンプルそのもの。この円筒をそのままスピーカーの音が出るコーン側にくっつけてしまう。スピーカーからの音は、この円筒の長さに応じて共鳴現象が起こるはずである。

【工作手順】チョーカンタン!
1)スピーカーを上に向け、その上にネジを二つとりつけてからの円筒を乗せる。

 


2)スピーカーにつけた結束バンド(25センチ)を円筒のネジにひっかけて結合する。

 


3)1メートルの円筒を、20センチと80センチにのこぎりで切り分ける。
4)切り分けた円筒のそれぞれを、スピーカーに取り付けた1メートルの円筒の上につけて、円筒の長さを、一つは120センチ、もう一つは180センチに延長する。円筒と円筒は、布のガムテープをぐるりと巻いて結合するだけ。

 

 スピーカーの背部はむき出しのまま、床に直置きし、メインスピーカーの後に配置する。すると、ほとんど見えなくなるので、化粧や塗装などはしない。
 あとは、音を出すだけ。

 



 試聴……サブウーファーのドロンとした異質で汚れた低音とは違い、ふわりと弾む、しっかりと芯のある高い品質の低音が得られた。フォステクスFE108solの音質に溶け込んでいる。サブウーファーで足している違和感がほとんどない。奥深い低音が鳴り響く。30年以上も前の、ほぼゴミ同然のユニットなのに、さすがにバックロード用のFE106Σである。低音だけが見事に量感アップした。FE108solの高品位の音を際立たせている。

 


 今回かかった費用は、約2000円である。