「二五年先を目指せ」 ②
パラグアイ文化会館の総会を終えた後、池田は理事長のクリタに「何歳になった?」と尋ねている。クリタは「四十七歳です。理事長になって10年です」と答えた。「正直、ほっとしていました。先生を迎えて、行事も無事故で終わって、ああ、これで使命を果たせた、と」。「まだ若いな」。池田はクリタを「二〇年、いや、二五年先を目指すんだよ」と厳しく諭した。「あの一言で、『これでいい』と決めつけてはダメだ。錯覚なんだと気づかされました。目が覚めた思いでした。さ
数年後、クリタの経営していた会社は手形詐欺事件に巻き込まれた。20を
超える金融機関が倒産する、パラグアイを揺るがす大事件だった。クリタの会社も倒産してしまう。
「二五年先を目指せ、という先生の言葉がよみがえりました」。クリタはその後、タイヤ輸入と観光の会社を立ち上げ、夫妻もすべて清算した。昨年、理事長をヒロシ・カタオカにバトンタッチした。その報告を受けた池田は、クリタに「私と共に、永遠に戦おう」と伝言している。
パラグアイ滞在中、池田が贈った和歌の中に次の一首がある。
天も 地も
川の流れも
仏土かと
地涌の菩薩の
君たち忘れじ
あなた方の涙と汗が染み込んだこの国土こそ「仏土」である。自分の幸福だけでなく、他人の幸福のために人生を捧げたあなた方こそ「菩薩」である──尽きせぬ感謝を込めた一首だった。池田は末尾の「じ」を綴り終える時、一番右端の「点も地も」の真下まで、万年筆を勢いよく伸ばした。揮毫を見た人々は、なぜ最後の一文字が伸びているのか不思議に思った。池田はその理由を、こう語っている。
「私は君たちを、どこにいても永遠に忘れない、という意味だ」
先駆者たち──中南米篇(5) 連載終了