「どんな犠牲を払っても貫き通す」 ②
信仰を失った山崎の姿が露わになっていた時期である。江森は池田へのインタビューで「かわいがってきた人間に裏切りというか、思いもかけないことをされていたことを知ったときの心境はどうだったんですか」と尋ねている。
池田は自らの会長辞任前、周恩来(中国の首相)の妻・鄧穎超(とうえいちょう)と会見した際、同じ話題が出たことを紹介した。鄧穎超は池田に「林彪もそうでした」と言った。「私どもが注意すると、私どもの前では『その通りにします』といい、陰に回ると、いつも陰謀、策略をめぐらし、あのような結果になった」。この鄧穎超の言葉を紹介し、池田は「どの国でも大なり小なり避けることのできない人間界のエゴと欲望があると思ったものです」と答えている。
「大河の流れをつくりあげていくことが大切なのです」とも語った。「他の教団と違って(創価学会は)365日、何百万の人が動き、語り、前進させていくという団体ですからね。ですから、そういうこと(=裏切り)にのみ神経質になっていたら、とても大胆な目標へ進んでいくことはできません」。
江森は「偉ぶるわけでもないし、きちっと対応していただいたし、『ああ、創価学会の会長を辞めようが辞めまいが、池田会長は池田会長なんだ。人間くさいこういう人だから皆がついてくるんだ』とわかった」と語る。
池田自身が先頭に立って進めている平和運動についても尋ねた。
「軍備の増強をしたから平和になるのではない。むしろ脅威をつのらせてしまう」。池田は小説『人間革命』をはじめ、あらゆる機会をとらえて訴え続けてきた信条を繰り返した。
「仏法者としてどこでもいいから、だれでもいいから平和希求の思想を訴え、事実のうえで行動していく以外にないというのが、私の信条なんです。やむを得ないという退嬰的な理論でなく、積極的、進取的理論しかない。行動しかない。訴えていく」
さらに、この取材の少し前にも別の懇談の場で同じ主張を述べたことに言及し、「学会がどうあれ、また公明党がどうあれ、これはその状況によっていろんな指導者が出て、どうするかわからないが、私はいままで学生部の会合などでいってきたこの(平和への)信念だけは、どんな犠牲を払っても貫き通すから、それだけ胸においてください、こういったんです。そうでなかったならば、時代迎合になりますしね」と強調した。
江森は「池田会長の意見が載るのは不愉快だと思った人もいっぱいいた。批判の手紙もすいぶん来た」と振り返る。「でも、そんなの百も承知ですよ。いちいち動じていられません。学会の人からも朝日の上の人からも『いいことを書け』と言われたことはない」という。
「公明党には個性のある党になってほしい」とも語る。「福祉政策もそうだし、ぼくは東京の町田市で教育委員をやったことがあるけど、教育は今、ものすごく大事です。公明党がもっと踏ん張るべきだとお願いしたい」。