「一気に事を決する」 ①
6月29日。事態が急変した。夕張炭労教宣部長の佐藤信男が三戸部宅を訪れ、炭労がが申し入れていた「直接対決」を「無期延期してほしい」と告げたのである。ストライキの処理で忙しいからだという。事実上の白紙撤回だった。
「佐藤教宣部長が三戸部宅に入ってきた時、足がガタガタ震えていた。そして『誠に申しわけありませんが、私たちは忙しいので、無期延期にできませんか』と」(荒関政雄の証言)。
三戸部宅に詰めていた東京からの応援隊の星野義雄は激怒した。
「対決、対決と喧嘩を売ってきたのはあなたたちのほうだ。それで私たちはわざわざ東京から来ているんだ。忙しいのは私たちのほうだ。やらなかったら帰れない。やりましょう」と詰め寄った。
「(佐藤は)『勘弁してほしい。忙しいので、頼みますよ』と言い捨て、逃げるように引き揚げた」(荒関)
なぜ炭労は突然、撤回したのか。この2年後に夕張炭労の組合長を務めた玉田重雄はこう語っている。
炭労は団体交渉などの「集団は強い」。しかし一対一の対話など「全然別なことにおいてやるとなると、自信を喪失する・・・・・会って愚をさらすよりも(撤回すべきだ)、ということになったんではないだろうか」。
夕張で同志を励ます池田の姿に触れてきた婦人部の岡本梅子。対決を申し入れておきながら直前に撤回した炭労に対して、烈火のごとく怒る池田の姿に驚いたという。
池田は翌30日、逃げた夕張炭労に二度、面会を申し込んだ。炭労側は「今日は代議員大会があるから」、代議員大会の後は「発熱したから」という理由で断った。強硬姿勢から一転、あっけない腰砕けである。
池田は「問題は解決したのではない」「夕張の学会員が二度と虐められないように、徹底して戦い、一気に事を決しておく必要がある」と戒めた。