世の中の変わりようは激しかった。真実とは、人間とは・・・・。敗戦により従来の価値観はひっくり返ったように思われた。何を支柱に生きていくべきか、若者たちは悩んだにちがいない。私もその一人であった。
無性に勉強がしたくなった。戦争という異常事態下にあっては、好きな読書も満足にはできなかった。そうだともかく学校へ行こう。それも昼間の学校へ行くことは、経済的にとても余裕がない。
終戦の秋にはまだ出征した兄たち4人とも家に帰っていなかったし、私は家の家計を支えることが不可欠であった。
そして終戦の年の9月から神田の東洋商業に中途編入することになった。
生活に疲れた人びとは、溜め息と吐息の連続。皆その日をしのぐのに精一杯であった。消沈、焦りの渦。生活の様式が大きく変わり、既成の価値観が逆転し、あわただしく変動する時代に、いかに生きていくかは難しい問題であった。
戦後の荒廃と虚脱が、思考力まで喪失してしまった人間を生み出す。このような世には、何かしら抵抗せざるをえない。家の付近に住む20歳から30歳までの学生、技術者、工員、公務員など20人ほどの青年たちが集まって、読書サークルを作っていたが、私もメンバーに加わり人生の指標を探していた。