木曜日、社員食堂でまた柳葉さんが来た。
きっと今日のお茶のことを言いだしてくるだろうと思ってたけど、言ってこなかった。
よくわかんない、あの人。 少なくともガンガン来るタイプじゃないね、パンクみたいに。
まあ、こっちはちょうど良かったけど。
店長と会うことになってたから。
仕事が終わってから、地元の駅の近くの喫茶店で店長と待ち合わせた。
以前、私に店長が副店長の話をもちかけてきたときに行ったところ。
定時に帰れなくて、待ち合わせ時間よりちょっと遅れて喫茶店についた。
店長はすでにいて、一人で週刊誌を読んでた。 テーブルのコーヒーカップにはコーヒーがまだ十分残ってたから、そんなに長くは待ってなかったみたい。
遅れたことを詫びて、二言三言とりとめのない話をした。
「で、仕事の事だったよね?」
と、振られたので、私は今、会社で遭っているイジメのことについて話した。
みんな(女子)から無視されていること。
社長の航空券とかの手配を依頼しても、返事をしてくれないこと。
こちらから催促しないと、向こうからは結果を教えてくれないこと。
給湯室に入ると、先に居た受付の女子2名が急に話をやめること。
毎日、ランチを一人で摂っていること(柳葉さんのことには触れてない。)
話しているうちに、だんだん感情がこもってきて、涙が出て来たけど、堪えた。
店長は、ずっと聞いてくれてた。
一通り話し終わった。
「そうか。 それはつらいな。」
その後は何も言わない。
しばらく沈黙が流れた。
間が持たないので、ときどきコーヒーを飲む店長。
私はずっと自分の手元を見てた。
「昔、鹿というのはその肉が美味しいから、猟師が好んで狩りをした。 」
突然、、訳のわからないことを店長が言った。
「え?」
「鹿だよ。鹿、美味いんだよ鹿の肉は。だから狙われたんだ。」と、さも食べたことがあるように言う。
「はあ。」 意図がつかめず、相槌を打つ私。
「亀は上質の油がとれるから、これも漁師が好んで獲ったんだ。」
「はあ。」今度は亀かよ!
「お金のある人は、詐欺師や泥棒から狙われる。」
「。。。。」それはわかる。
「まあ、そういうことです。」と、大学の講師のように店長が締めくくった。
「え?」私は訳がわかんない。
「エイコちゃんは美人で頭もいいから、みんなから妬まれるんだよ。そういう宿命なんだよ。」と、店長が言う。
「宿命。。ですか」
じゃあ、どうしようもないじゃない。
「日本人は島国民族だからね。村文化って話しただろう? 異端児は村八分にされるんだよ。とくに美人だとね。 嫉妬。 ねたみ。 ジェラシー。 一過性のものだ。 気にしなくていい。 逆に出張かなにかあったときに、お土産をうんと買ってきてあげなさい。いつもお世話になってますと、笑顔であいさつしなさい。 廊下や給湯室で出会ったら、お辞儀をしなさい。決して、ふてくされた表情は見せない事。 社長の用事でどうしても依頼をしないといけないときは、社長の名前を出しなさい。 社長からの指示だということを明確に表しなさい。 時間がたてば無視はなくなる。」
いつもの頼れる店長になった!
「わかりました。ありがとうございます。」
私は店長の話すべてに納得することができ、心がとても軽くなった。私が美人で頭が良いかはクエスチョンマークだけどね。
「しっかし、会社ってのは大変だな。まあ、俺もそこから逃げたくて今はコンビニやってるけどね。」と、店長。
「店長って、サラリーマンもコンビニの店長も似合いませんよ?」
ちょっと意地悪に言ってみた。
「そうか? じゃあ何が似合う?」
「うーん。 何だろう。 先生でもないしなー。 でも、なんか人を指導する立場の人。」
「人を指導するような人間じゃないよ、俺は。 あーそうそう。お前たちどうしたんだ?」
私は、なんことかわからず、キョトンとした。
「パンクだよ。 最近、元気ないぞ、あいつ。」と、店長。
「あんなロリコン知りません。 」私は手元を見たまま言った。
「ロリコンなのか、あいつw まあ、話したくなかったら言わなくていいけど。 若い時ってのは、ちょっとした勘違いで取り返しのつかない失敗をすることだってある。 ちょとしたプライドで、大切なものを無くしてしまうことだってある」
え?私が勘違いしてるってこと?
パンクのやつ、ひょっとして店長に話したな?
プライド? そう言えばMちゃんにも言われた。
店長が続けた。
「事情は良く知らんが、俺はパンクは学歴はないかもしれないが、、、まあ頭もあまりよくないかもしれないが、、お金もないし、、、下品だしなー うん。やっぱやめておいた方がいいぞ、あいつは(笑」
「なんなんですか、それ!wwww」
二人で大笑い。
なんか久しぶりに笑ったー。
またねー