勝海舟が河上彦斎について
河上は酷い奴さ
怖くて怖くてたまらなかったね
みんなで集まって誰々が野心があるなどと話していた時のことさ
奴は「ははあ、そうですか」空返事をして、とぼけるけど
即日斬ってしまう、そして何事もなかったかのように
すましてやがる、喜怒哀楽を全く見せないのさ
また河上はあまりにも多くの人を殺すもんだから
そんなにすぐに人を斬るもんじゃない
お前は相手が気の毒に思わないのか?
と言ってやったら
あなたは私が人を斬っていることに気付いているのですね
それは知っている
あなたはご自分の畑に植えた茄子やきゅうりはどうしますか?
良い時期を見計らってすぐにでも沢庵にでもつけとくでしょう?
あいつらも同じなんですよ
いくらこっちの考えを言い聞かせても無駄なんです
いらなくなったら早めにちぎってしまうのが一番ですよ
あいつらはいくら殺したってなんでもありませんよ
と笑って答えやがった。
酒の席で仲間が気にいらない幕仕の話をしたところ
黙って聞いていた彦斎は立ち上がり外へ出て行った
しばらくしてその幕仕の首を袖に抱えて戻ってきた。
象山を斬った後、彦斎はこのように語った
「わしはこれまで、誰を斬っても、わら人形ば斬るように、平気じゃったばってん
今日は違うた、始めて人間ば斬る気がして
髪の毛のさか立つ気がした、象山は確かに絶大の豪傑じゃ
こぎゃんことばかししとると、わしの命も長うなか