壁に来て草かげろふはすがり居り透きとほりたる羽のかなしさ

 

自らの芸名を斎藤茂吉の短歌から引用した先輩がいた。かつて同じ舞台に立ったその先輩役者は、古巣を飛び立ち、同志と共に新しい景色を作り始めていた。その後の活躍は時々耳にしていたが、なかなか見る機会が訪れず、十数年振りの再会は、たまたま京大・西部講堂まで原オナ×非常階段×ブラフマンという素敵なライブに行った時に、開演までの空き時間、図らずも足を運んだ吉田神社で偶然公演をしていた境内であった。「良かったら観に来て」とお誘いは受けたが、ライブの後でヘトヘトビショビショになってしまい、結局観ることは叶わず現在に至る。そして今年になり、彼はさらに新しい景色を求め、かつての芸名を捨て、というよりも本名に戻し、一人で歩み始めたらしい。この舞台に対するしぶといスタンスには頭が下がるばかりである。またいつか一緒に、という事はおそらく難しいと思うが、それでも彼も一緒に過ごした「ある時間」は今でもよく思い出すのである。

 

via らいふすてーじ
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