にもかかわらず、仕事終わりに、会社近くの恩田川を7km ランニング。そのあとは、職場の食事会。ほんの少しの不安感、でも計画通りのスケジュールをこなしてしまった。
ゴルフボールくらいのたんこぶ。その夜は保冷剤で冷やしながら寝た。
翌日、やはり気持ちの隅っこで不安感があるので、病院受診をしようかと思案する。やめよーかな、行こうかなー、と繰り返し考えて行くと決めた。脳外科を受診するなんて、こんな機会はなかなかない。勉強のつもりで行ってみよう。
仕事で訪問した総合病院、ついでにそのまま受付に行くと、今日は脳外科の先生はいないと。
ならばと、帰路にあるもう一軒の総合病院に寄る。なんと!こちらも今日は脳外科なし。帰社して職場仲間から紹介された、近所の脳外科を予約する。
初めての脳外科。なんと、先生が待合室に呼びに来る。診察室に通されるときも先生がドアを押さえてくれて、イスをすすめられた。
そして、ここから、この先生の独演会がスタートした。
診察室。斜め45度、先生と向き合う。ニコッと笑顔で白い歯が光る。とても優しいトーンで、それでいてよくとおる声「はじめまして。どうなさいました?」事情を説明すると、僕の目をまっすぐに見て「ポイントは2つ。」といって、めちゃくちゃ簡潔に要点を説明して、MRIの手配をしてくれる。
再度診察室。先生は画像を見ながら、ド素人のぼくでも十分に理解できる言葉をチョイスして説明が始まる。
適切な間をつくりながら、発する声はやわらかすぎずに、そして強弱をつけ話が続く。もちろんキラリと光る白い歯。アイロンのきいたブルーのストライプのボタンダウンシャツ。小さな間のあとに、「今日のところは、問題はありません。」その言葉に、やっとホッとする僕。その台詞が聞きたくて、今日は受診をしたのだ。すると、先生、横目で僕の瞳をのぞきこみ、
「ところで、人の一生の半分近くを睡眠と食事、排泄に時間を使ってるって、ご存知ですか? 」
「そうそう。私は脳外科の専門の他に、アンチエイジングの専門でもあるんです。」
そこからは、長瀞のライン下りのごとく、先生のアンチエイジングの話が始まる。話は非常に分かりやすく、
加齢と老化、人間の体の寿命、脳の可能性、食事と運動、ワークライフバランス、ワクワクドキドキすること、等々
以上のテーマが淀みなく、滑らかに流れていく。ただ、どーしても僕は先生の目を見ることに羞恥心があった。とくに、ワクワクドキドキというフレーズを言うとき、先生は自分に酔っていた。直視しにくかった。だが、こんなに真剣に語ってくれているんだから、失礼がないように説明している先生の目を見て相づちは続けた。そしてそろそろ終わりかな?ってところで、
「だから、サイテーでも、一年間に一回のMRI検査は重要なんです。予約制ですから、あまりお待たせもしません。 たくさん患者さん来てますが、予約すればお待たせしません。
なにか質問はありませんか?」
こうしてクロージングとなり、僕は診察室を出た。
労災でお会計がないので、すぐに帰ることができた。二時間の研修だった。先生の引き出しには、あの手のネタがいくつあるのだろう。
ひとつ社会資源を明確にできた。なかなか、良い経験になった。