新興国の「リスクチャンス」
一瞬湧きあがった新興国リスク。衰退国リスクもなかなかのものだと思うのだが。 ただ株価はリバウンド。個人的には、米国市場がドバイからの報道に動揺しなかった事と、その後の日銀の「新型オペ発表」が効いたと思う。
資金供給という面で効果があるのかどうかよく分からない日銀の新型オペだが、政府を含めた「緩和スタンス」という面では、為替市場にそのアナウンスメント効果があった模様。
-------------90.48/JPYUSD 12/05 05:31
デフレ宣言したものの対応策が無かった金融当局だが、ドバイショックによって駆け込み的に政策発表。間接的に、落ち込む株価を引き上げた。
図を見て分かるとおり、円高けん制になるのかどうか分からない財務大臣の発言だが、実際の政策発表にはマーケットは反応するという事。 ただ、高値超えも期待され始めた株価だが、このままトレンドに乗るかというと、そんな事はない。NK11000は近いようで遠い。
そして昨日は、東証の「欠陥だらけのシステム判決」があった。
2005年の12月って事で、もう4年が経った。うーん本当に早い。
社長は「発注を止める権限は無く、みずほ証券のミスはあり得ない」みたいな開き直った事言っていた。これは人為的ミス(不測の事態)を想定できるシステムではありません、と言っているようなもの。 社長がこんな認識だと来年の上場なんて難しい。 金融市場が不安定な時に、東証自体が不安定だと、そら投資家も逃げ出します。今年の大納会には石川遼クンが登場するという事だが、クラブで社長の頭をはたく等やってくれたら盛り上がる、(ような気がする。)
新興国への賭け
オマケとしてGSの新興国投資。 下はドバイの没落。
まぁこんなものを見ると、新興国敬遠の動きとなるのだろうが、その風潮(新興国離れ)を逆手に取るのが市場の法則?といったところ。
ドバイに始まる「新興国リスク」といわれる中で、ゴールドマン等は2010年の成功に、やはり新興国投資は欠かせない、と考えている模様。 来年、成功する為のトップトレード10(GS)の中にロシアやトルコへの投資が入っていた。
「Goldman:Here's How To Make A Killing In 2010」
Ignore all that political risk, and everything else you might have your head about Putin's state. Bet on Russia! Russia’s economic growth profile is among the most robust in the region. After a steep 9.5% decline in 2009, Russia’s economic turnaround will be sharp, with GS economists expecting real GDP to rebound to +4.5% in 2010.
政治リスク等、すべて無視して経済成長の強さに注目。ロシアに賭けろ、という具合。2009年の9.5%の落ち込み後、景気回復は鋭く2010年GDPは4.5%の反騰予想との事。
Get ready for strong growth and..
ロイターにはこんな記事も出てたんだけど、先進国が衰退する中、ドバイショックを尻目にBRICsを中心とする新興国が、来年も世界経済をリードするのは間違えない。抜け目のないファンドは金融不安も、チャンスと睨んでいるものと思われる。リスクの中にチャンスあり。
追記>W杯組合せ。この為に起きていました。ちょい脱線してサッカー。
日本は、カメルーン・デンマーク・オランダ。
初戦のカメルーン戦に敗北した後に、デンマークとオランダ相手に予選突破はほぼ不可能。日本のメンタル面を考えても、そう言いきれる。(立ち直れない)
W杯予選リーグのデンマークは本当に強い。予選リーグでのオランダとデンマークは同レベルと言える。
という事で、問題は初戦のカメルーン。自分の印象では2001年のコンフェデ、オシム時代の大分での2ゲームが印象深いが、カメルーンは、アフリカ特有のチーム事情を持っている。 要するに、その時によってチームがバラバラ(仲が悪い)なのか、まとまっているかで強さはまるで違ってくる。
アフリカ大陸という意味では、カメルーンはホームという事になるが、カメルーンの問題は試合会場ではなく、そのようなチーム事情となる。日本VSカメルーンは、日本側の問題でなく、カメルーン側の問題が大きく影響する。
日本にとっては過去3大会での初戦の中で、一番想像がつかない試合となる。これは、どんなサッカー評論家が出てきても、的確な試合予想をする事はまず不可能。
ただ言えるのは、日本はアフリカチームを苦手、みたいなメディア論調が定評となっているが、実際には大きく違う。日本はアフリカチームにはどちらかというと強い。どちらにしても、カメルーンのコンディション次第。カメルーンに勝つ事ができれば、予選突破の可能性は無いとは言い切れない。 まぁでも普通に考えれば、オランダとデンマークが抜ける。可能性は25%といったところ。
自惚れの巨塔
前回の「ドバイワールド向け融資残高」に続き、UAE向け。
「UAE向けエクスポージャーは英銀が最大、HSBCの融資目立つ」
>BISのデータによれば、世界の銀行によるUAEへの融資総額は6月末時点で1230億ドル。このうち英銀行は500億ドルで、フランス(113億ドル)、ドイツ(106億ドル)、米国(106ドル)、日本(90億ドル)を大幅に上回っている。
との事。記事ではプリントミスで米国が106ドルになっていた。
という事で、こんな感じ。(2008年末時点)
記事の通り、英銀がずらりと並ぶ。HSBC、SCB、バークレイズ、RBS。それに続くのがアラブ銀行。そして米シティ。
ただ、記事も指摘している通り、HSCBの融資額が175億ドルと目立って多かったが、今年6月末時点では159億ドルに縮小していた、となっている。よって出回っている上記の統計からは若干の変動が起こっているが、大まかには同じ比率と考えて良さそう。
>HSCBは問題のあるドバイ向け融資についてコメントを控えた、となっているが、上記のUAE向け、前回記事のドバイワールド向けのデータは出回っているが、ドバイ単独についてのデータは見当たらない。 ドバイ向け債権規模は、自分には見当つかないが、たまたま無いのか混乱を拡大するからか、その辺はよく分からない。
ただ、HSCBはダンマリという事で、デフォルト懸念はくすぶったまま。数字的には23億ドル(ドバイワールド向け)以上159億ドル(UAE向け)以下、といったところがHSCBのUAE向け融資残高の不透明な部分になる。
Update>ここのところ、英Financial Times
いわゆるオイルマネー。
に頼った経緯もある。そのような側面も楽観論を促した1つの論拠となっている。
西側では、湾岸協力会議(サウジ、UAE、バーレーン、オマーン、クウェート、カタール)がドバイを助けるべきだとの声もある。 しかし湾岸協力会議は、緊急対策のためのツールではないので、それは現実的ではない。
そして世界がドバイを懸念する中で、ドバイの苦境に「ほくそ笑んでいる」向きも湾岸諸国にはかなりあるようだ。 何故なら、UAEの中でのドバイは強烈な独立心を持ったメンバーであり、ハイリスクな経済成長は、近隣諸国を不安に陥れていた、という経緯があるからだ。
自惚れの巨塔
高いレバレッジの利いたプライベートエクイティーのようになり、本来のビジネスモデルとは無関係な借り入れにのめり込んだ。サービス中心の経済を目指すはずだったのに、脱線して投資ファンドになってしまった。
政府系企業の債務が膨張する監視体制が政府に存在しなかった事も露呈してしまったが、この一連の流れはアメリカの金融危機と同じだ。モラルハザードとチェック機能の欠落は、共存している。
始まる現実
「ドバイ余波」
ドバイショックから、CDS市場もワイド化が加速。
ドバイのCDSは26日から27日に掛けて、541bpからの大幅なジャンプアップ、647bpとの事。
Market Data Friday, 27 November 2009—23:30
Dubai/Emirate of 647.09 bp
Hong Kong 62.56 bp
Australia 40.00 bp
Japan 80.32 bp
円高攻撃によって株式市場が急落した日本もしっかりと4位にランクイン。アブダビ、バーレーンなど他のペルシャ湾岸諸国、東南アジア含む新興国も軒並み上昇。 ドバイショックという事で、新興国を一くくりで捉えたようなCDS市場なんだけど、ドバイでデフォルト懸念が起こったからといって、他の新興国でも同様のリスクがあるかというと、実際にはそんな事は無い。
というか、金融不安が起こった時のCDS市場は過剰ともいえる反応を見せるので、そこは認識しておく必要がある。(要するに大袈裟)
ただ、ドバイのスプレッド上昇は当分続く事になる。
日本国内では、ドバイショックによって直接的な損失が懸念されるのは建設セクター。 「ドバイショックで建設株急落、国内企業の成長戦略に影響も」
先週末のマーケットでは、大林組<1802.T>が東証1部で値下がり第1位となったのをはじめ、大手4社が値下がり上位にランクインとの事。
という事で、こんな具合↓
>中東地域は、大手ゼネコンにとって今後の成長戦略を描く上で重要な地域に位置づけられた経緯がある。公共事業の削減が進み、国内ビジネスだけでは将来の展望が開けない
ゼネコン各社としては、将来の展望を描く上で中東での事業の比重は高く、さらには最近の原油価格再上昇によって、中東への投資意欲が前向きになってきたところへ冷水を浴びせられたという訳だ。
そして1960年代の「ブラジルの奇跡」を例に出して、先行きを予想。
>ブラジルは1960年に現在の首都であるブラジリアを建設。その後、開発ラッシュとなり「ブラジルの奇跡と呼ばれる発展を遂げたが、結果的に財政負担を残し、累積債務問題が発生。融資していた米銀が何年も苦しむことになった。ドバイの問題では欧州系金融機関が同じ道をたどらないとも限らず
結果的に、さらなるBIS規制強化に結びつく可能性があるというご最もな意見。問題の中心となるであろう英銀では、RBSがドバイワールド向け最大手、UAE全体としてはHSBC。
「ドバイ・ワールド融資幹事、RBSが最大手-UAE向けはHSBC」
RBSが全体の17%に相当する、という事だったので調べてみるとこんな具合。
「Global bank exposures」
三菱UFJは中東向け与信残高が1兆円弱、ドバイワールド向けは明らかになっていないという報道だったが、ふたを開けてみると日本のメガバンクは、軒並み数百億。 一連の損失につながる可能性、との事だが、現時点での債務残高では世間で言われているように、確かに損失は限定的なように見える。
ただ、ドバイの債務の実態が明らかになるまでは、市場心理は不安におののいたまま。不透明な部分が明らかにならない限り、マーケットの腰折れしやすい状態は当面続く事になる。
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