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「日本の敵」

原発事故に続く2次災害、人災による「第2波」が起ころうとしている。


先日の読売 によると、政府はどうやら東電の賠償金サポートの為に「電気料金の値上げ」を容認する方向で調整に入ったらしい。さらにこの記事には「安易な値上げにならないよう政府が厳しくチェックする」というようなボケた事が書かれたある。


株主責任問われず、徹底したリストラ・資産売却もなし、債権者だけでなく経営陣までもがぬくぬくとしている。そして東電社長が役員報酬5割カットに対して「あまりに厳し過ぎる」と発言した事は既に有名になった。 要するに、あらゆる責任を問わないどころか、上場維持まで前提としている。そんな中で「厳しくチェック」も何も無いだろう。


「東電支援の話はよく分からないから(関心が持てない)」、といった事を知人女性が言っていた。ひょっとしたら日本全体でもそのように思っている人もいるかも知れない。なのでこれは言っておきたい事になる。

東電の責任問題について、難しい事は全く無い。あれだけの人災を起こしたオカルト企業の賠償金を「何でオレ達(国民)が払わなくちゃいけないんだ」と言った簡単な話になる。 河野太郎議員も怒り狂っている ように、東電を逆立ちしても鼻血も出ないようにしなくてはならない。これは感情に任せた議論では無く、ごく当たり前の話になる。


例えば、「東電役員の半額は高過ぎる」、といった議論がある。そういう議論に問い掛けたいのは、「90%減だったら良いのか?」という事。90%減でも、そして報酬が1円でも高過ぎる。何故なら金額の問題では無く「責任順位」の問題になるからだ。


「上場維持前提スキーム」の理由として、社債市場における東電債の発行規模が大き過ぎる、といったものもよく見掛ける。しかし株にしても社債にしても投資してきた人は今まで利益を享受してきた訳であって、倒産の危機にあった時だけ損失を免れようなんて虫の良い話だと言える。経営に参加していると言うリスクを投資家は自覚しなくてはいけない。



やりたい放題の各省庁


そういえば上記、河野議員の記事 の中に

「金融機関も自分達がリスクをとって貸したお金を、国民に負担をさせて回収してもよいとは思わないだろう(思うかもしれないが、それは許されない)。」といった一文があった。


しかし先日、「金融不安を懸念する金融庁は、東電の支払い上限を設定するスタンス」といった報道 があった。 

金融庁の思惑はメガバンクの提案でもあり、言い換えると、「東電の取引銀行であるメガバンクがデフォルトを喰らいたくないものだから、金融庁にすがっている」という話になる。 簡単に言うと、自分達が損したくないものだから、「東電の損失額に上限を設けて、あとは国民負担で良いでしょ」、と東電の取引銀行が言っている訳だ。

ブログを書いているだけでこれ程頭にくる事も無い訳ですが、上記のように東電だけでなく取引銀行等も、陰では好き勝手な提案をしている事になる。


東電を盾にして、陰に隠れっぱなしの経産省(黒幕)にしても、その東電とグルになって原発を脅かす新エネルギーを徹底的に潰してきた。原発を脅かす新技術に対して、東電と経産省が圧力を掛けてきた事は既に知られた話になる。原発村に都合の悪い河野太郎議員のような政治家ですら、大変な嫌がらせを受けると言った話も知られている。


5月2日の産経ニュース によると、過去50年間で経産省から電力会社への天下りは68人に上るらしい。ただ、問題なのではこの記事の中身に加えて、先日岸博幸氏がTVで言っていた内容になる。

彼は、狭い日本に電力会社がいくつもある理由として、「1ヵ所しかなければ天下りは1人しかいけないが、9ヵ所あれば9人いけるから電力会社を分散している」、という驚きの事実を証言していた。しかもこの事は自分が知らなかっただけで、多くの人が既に知っている有名な話らしい。一般の人間にとっては信じ難い事実だと言える。



癒着という危機の真因  -NYTの記事-


そして、そんな経産省と東電の「天下り」が世界的にも恥さらしとなっている事にも触れておこう。


共産党のHP に「東京電力の天下り問題で、米紙が共産党を紹介」と題していた事から、NYTの原文を確認してみた。すると、記事では癒着の文化が原発事故に結び付いている事を大々的に報じていた。

Culture of Complicity Tied to Stricken Nuclear Plant


この記事は大変長いという事で、気になる箇所だけ挙げておく。


○ 核査察官であるスガオカ・ケイ氏という人物が、2000年に監督官庁(旧通産省)に「東電の配管のひび割れ隠し」を告発したところ、驚くべきことに保安院が東電にその事を逆通報した、という事が書かれてある。


○ 「天下り」や「原子力村」についても細かく説明されており、原子力事業者・官僚・政治家・学会で構成される原子力村が既得権益に群がっている事、原発の安全性に公然と異議を唱える少数派は村八分(排除)されるという、「村の体質」について言及。 

長きに渡って原発に批判的だった民主党の少数派、大島九州男(くすお)議員の「最近まで原発問題に触れる自体がタブーだった」というコメントなどが紹介されている。


○ 「原発産業に対して最も厳しい批判者」として共産党が紹介されている。

1959年から2010年に掛けて、4人の官僚が「指定席である副社長」に就任している事実が指摘されている訳ですが、これは共産党のデータに基づいたもの、となっている。(全体としては過去50年間で68人

ちなみに4人の官僚と言うのは、石原武夫、増田實、川崎弘、白川進の事を指しており、いずれも「顧問→取締役→副社長」の規定ルートに乗っかっている。NYTは、今年天下ったばかりの石田徹氏についても「当初菅政権は、石田氏の就任について擁護してきたが、共産党が天下りの実態を公表した途端に態度を変え、結局彼も辞めざるを得なくなった」、としている。


○ 日本の2大政党と原発村の強固な癒着についての言及がある。

記事では、「現在の政治体制自体が原子力産業の大きな受益者」であり、ずさんな規制が自ら(政治家)の利益を生み出す事を指摘。

自民党が原発関連企業と密接な関係を持っている事、そしてそれを引き継いだ民主党は、原発関連企業の労組と癒着している、としている。(代表的なところでは蓮舫など)

そして、改革派として定評のある自民党議員、(冒頭の)河野太郎議員のコメントとして「両党は電力会社の言いなりとなっており、電力会社がやりたい事を追認してきた」というものが紹介されている。

これは河野議員自身の記事 にある最後の一文、

「こんな政府とそれを支えている与党はつぶさなければならない。もちろん、こんな賠償案を支持しようとしている自民党の電力族も。」 という言葉からも、民主党だけでなく自民党の中に電力族が群がっている事を想起させる。



菅政権という「日本の敵」


経産省や保安院、東電を「電力マフィア」と形容した記事を、最近どこかで目にした。

しかし、そんな言葉は親切過ぎる。マフィアが「仁侠」を重んじる組織ならば、原発村の面々は「秩序なき犯罪集団」と言えるからだ。


今朝のWSJ にも、「電力会社の労働組合から支持を受けている議員も、東電の賠償軽減に前向きである場合がある」との指摘があった。 これら(海外の)記事に共通するのは、危機の本質を「国と電力会社との癒着」に置いている事だ。日本では原発の技術や放射能の影響力ばかりが取り沙汰されていますが、明らかに事故原因とはズレており、米メディアの指摘は本質を突いている。


「役員報酬最低2000万は欲しいので、その後は全く無関係の国民の支払いで」と言っている東電や、「損失免れたいから、あとは国民負担で」と言っている取引銀行及び金融庁。 そして東電と同じムジナである経産省等、東電と各省庁の利害が一致した無茶苦茶なスキームを、現政権は容認しようとしている事になる。


よく、日本の仮想敵国として中国や北朝鮮が挙げられますが、日本の敵は海外では無く国内にいるという事が、今回の事で立証されつつある。 

目の前で行われようとしている「暴挙」を誰が容認しようとしているのか?しっかりと見極める必要がある。