「夏の夜の夢」、世界はティターニアが回している、凄い芝居だった! | えいいちのはなしANNEX

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また、とんでもないものを見てしまったなあ!

ナショナル・シアター・ライブ「夏の夜の夢」。ロンドンではこんなシェイクスピアをやっているのか!

ロンドンの舞台の生中継配信を、あとから映画館で見る、てやつね、ライブビューイングてのは。
ハーフタイムに演出家インタビューが入る、という、親切っていうか自信満々の構成。
勉強になるぞこれは(笑)。
いわく、ピーター・ブルックの衝撃は余りにでかいので、それを越えるアイデアが出来るまで「夏の夜の夢」は出来なかった、って言ってたけど。
とにかく、よくぞこんな、禁じ手っぽいことを思い付いた。
オーベロンとティターニアの設定が、逆になってるんだよ! つまり、ティターニアがやたら強くて、パックを手下にして魔法をぜんぶ仕組んでるのはティターニアで、魔法を掛けられて驢馬頭のボトムに惚れちゃうのはオーベロンなんだわ。これは爆笑だ。
てゆうか、この劇の意味が、ぐりん、と変わってしまう、くらいの。面白い演出だ、なんて程度の話じゃない。

シーシュースとオーベロン、ヒポリタとティテーニアが二役なんだけど、のっけから怖いのは、聖歌隊みたいなんが「邪教の信者は地獄に落ちるぞ~、結婚したら邪教を捨てて正しい信仰に~」みたいなんを歌うなか、ガラスのケースに入ったヒポリタが無表情で登場して(されて)くる。この状況で、いかにも権力者然としたシーシュースが「戦争に勝って略奪したあなたと結婚するのが楽しみだ」みたいなこと言ったら、この物語ヤバイ!って誰でも思うよ。
で、娘の結婚問題を持ち込んでくるイージアス、「娘の相手は父親が決める、したがわなければ死刑」という、ものすごい父権制の掟を、当然のようにシーシュースは支持、というか男権思想の権化として振る舞う。
ヒポリタが何か言いたげにすると、必ず前にシーシュースが立ち塞がる。
こんな話だったか夏の夜の夢? 昔は「結婚式のおめでたさ」という表面に目くらまされて、全く気づかなかった。
森の妖精シーンで、オーベロンとティテーニアの役割を逆になることで、がんがん逆襲されていくんだ。これは痛
ティテーニアの女優が、デカイ! 力強い! カッコいい。この女性が世界をまわすんだ。
驢馬頭のボトム(デカイ、アフリカ系男性服、これもただもんじゃない)に惚れさせられるのはオーベロンだから、このシーンはもう大爆笑だ。
アテネの権威的秩序が、森のなかでどんどん
演出家は言うんだ、「人間は、規範を逸脱して狂瀾することができる」。誰と誰が愛し合ったっていい、それが男と男でも、女と女でも。
 
あんまり言ってもアレだけど、舞台と客席の構成が楽しい、空中アクロバットの妖精さんたちが楽しい、職人たちの余興芝居の完成度が半端ない、ラストシーンのアテネが、最初と打って変わって、明るくて楽しいのが納得できる。
特に、ボトムね。
俺が「今度のボトムはどんなんだ」と注目するのは、ある意味当然で(だから夏の夜の夢はどこのを何度見ても終わりはないのさ)、このボトムも恐れ入った。アフリカ系の凄く大きな男優だけど、踊るわ歌うわ、とにかく上手い。
しかも、これが魔法にかかってシーシュースと絡むから、爆笑なんだよ。
これはもう、ね。参りましたね。
 
 

 

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