「先生が薦める英語学習のための特選映画100選 中学生編」という本があります。この本を監修している映画英語アカデミー学会は、日本の英語教育における外国映画の活用を推進する産学協同の組織だそうです。

 

映画英語アカデミー学会公式ホームページの会長挨拶を引用すると
教室にいながら、さまざまな出来事を世界の美男、美女たちと疑似体験できる映画は、若者の英語離れが指摘される今の時代に最も必要な教材であり、英語教育の切り札と言っても決して言い過ぎではないでしょう。

 

曽根田憲三会長の見解は的外れで、かつ、過言です。昔に比べて今は「若者の英語離れ」が目立ちますか?大学入試に民間4技能試験を導入しようとしている昨今、映画は英語教育の切り札ですか?

 

特選映画100選「中学生編」の最初に紹介されている映画はOutbreakです。アフリカの戦場で発生した感染力の強いウイルスが小型のサルを介して海を渡り、アメリカの小さな町であっという間に広がります。その感染拡大を防ぐために軍が介入するというメディカルサスペンス映画です。

 

これを中学生に見せて、英語学習の役に立つでしょうか?私もDVDを借りて視聴してみましたが、これを聞いて理解するのは難しいですよ(苦笑)。

 

中学生どころか、中学校の英語教師でも理解できない人が大部分だと思います。「英語担当教員の英語力の状況(中学校)」というPDFによると、平成28年12月1日現在で、英検準1級以上(英検準1級、TOEFL PBT550点以上、CBT213点以上、iBT80点以上、TOEIC730点以上)を取得している教員は約30%です。つまり、中学英語教師の7割は英検準1級レベルに到達していないと考えられます。

 

たとえ英検1級合格者でも、字幕なしで洋画を視聴して理解するのは決して容易ではありません。ましてや、語彙力が1000語程度の中学生がOutbreakを見て何が分かるでしょうか?

 

「先生が薦める英語学習のための特選映画100選」シリーズには中学生編、高校生編、大学生編、社会人編があります。中学生編で紹介されているOutbreakでも十分難しいのに、社会人編の難易度はどうなっているのでしょうか。

 

と言うか、このシリーズの難易度は妥当な評価と言えるでしょうか?

 

映画英語アカデミー学会の理事会にはスクリーンプレイ、ムービーマネジメントカンパニー、キャノン、キネマ句報社など民間業者が含まれています。英語学習者のための教育学会というより、経済的利害の大きい学会かもしれません。