今日は語彙力と読解力の相関関係を実証した論文を2つ紹介します。「そんなの当たり前でしょ」と言う方も多いと思いますが、その通りです(to state the obvious)。

論文1:The Predictor Factor of Reading Comprehension Performance in English as a Foreign Language: Breadth or Depth
本論文では、Paul Nation教授のVocabulary Levels Test(VLT)を使ってイランの成人男女220人が持つ語彙数(size/breadth)を推定し、John ReadのWord Associates Test(WAT)で語彙の質(depth/quality)を評価した。読解力の指標としては、IELTSのリーディングセクションのスコアを求めた。さらに、語彙力と読解力の相関性を定量化するため、ピアソンの積率相関係数を算出した。

結果1:VLTとIELTSの相関係数は0.834で、WATとIELTSの相関係数は0.684であり、いずれも統計学的に有意でした(P<0.05)。日本での知名度はTOEFLの方が高いですが、IELTSの世界的な知名度は極めて高いです。そのReading section scoreとVLTの間に相関がある---当たり前と言えばそれまでですけど。

論文2:The Relationship between Vocabulary Size and Reading Comprehension of ESL Learners
この論文においても、Paul NationのVLTを使って大学入学前のマレーシア人129名の語彙力を推定した。読解力は、同国のEnglish Proficiency Test(EPT)によって評価した。さらに、論文1と同じくピアソンの積率相関係数を求めた。
結果2:VLTとEPTの相関係数は0.641で、統計学的に有意であった(P<0.01)

これら二つの研究論文が示すように、語彙力(breadth/depth)と読解力との間には明らかな相関があります。リーディングだけでなく聴解力との関連を調べた報告もあります。To state the obviousですが。このような研究結果を知らない日本の高校生も、英語学習において単熟語を学ぶ重要性を直感的に理解しているでしょう。最近市販されているボキャビル本の中には、英文音声ファイル(MP3)をウェブから無料ダウンロードできる場合があります。本を買わなくてもダウンロードできることも少なくありません(笑)。