「英語を入試科目から外し(二次試験も)英検準2級取得を出願の要件とする←クリック
2)英検準2級であれば、1)の方針で授業展開をすれば十分習得できるレベル

 

文部科学省が発表した平成26年度「英語教育実施状況調査」によると、高校3年生のうち英検準2級以上を取得している生徒は11.1%で、英検準2級以上相当の英語力を有すると思われる生徒は20.8%でした。両者を合わせると31.9%です(PDFの2ページ)。一方、平成27年度の大学・短大「現役進学率」は54.6%で浪人を含めると51.5%だそうです。英検準2級取得を出願要件にすると、現状では約20%(およそ20万人)は大学出願できなくなります。

 

平成26年度「英語力調査結果(高校3年生)」によると、読む、聞く、書く、話すことに関してCEFR A2レベル以上と思われる生徒の割合はそれぞれ27.3%、24.1%、13.5%、12.8%でした。英検準2級はCEFR A2レベルであり、合格するためには話す能力も必要です。英検準2級を大学出願要件にすると、数十万人の高校生は大学出願できなくなります。それでは学校側も生徒も困りますから、必然的に高校3年生の授業には英検対策が盛り込まれるでしょう。高校だけでなく、「英検準2級」対策を掲げる私塾の夏期講習がネット広告に出てくるでしょうね(苦笑)。

 

Speakingに関してCEFR A2以上と思われる生徒の割合は12.8%

 

さて、英検準2級の第1回検定(6~7月)で合格した生徒はどうするでしょうか?全教科万遍なくできる優秀な人は別ですが、英語は得意だが数学は苦手な人は・・・英語学習時間を削って数学に取り組むでしょう。英語教員は英語のことばかり考えがちですが、ほとんどの高校生にとって大学入試は英数どちらも重要です(他の教科も必要)。


3)大学には英語教育の専門家がいるので、英検準2級の力がある学生に1~2年で必要な英語力をつけさせるのは十分可能なはず。

この方は、今年の3月に「自分では教えられない大学教授。。。」というタイトルで、大学教授は自分で教える自信がないと批判していました。その一方で、1~2年で必要な英語力をつけさせるのは十分可能なはずと書くのは矛盾しています。


4)「入試」というプレッシャーを外せば、ほとんどの生徒は前向きに英語に取り組むと考える。
韓国の大学入試が過熱気味という話はメディアでよく取り上げられています。そのプレッシャーは日本の比ではありません。では、韓国の学生は受験戦争のため、前向きに英語に取り組むことができず、日本に比べて英語力が低いでしょうか?むしろ、その逆ですね。

 

日本の高校生の約半数は大学入試を控え、程度の差はありますが重圧を感じていますが、大学生はそのような緊張がありません。では、日本の学生は大学入試に合格した後、前向きに英語に取り組み、英語力が飛躍的にアップしているでしょうか?京都産業大学の図書館には12,000冊以上の多読教材があります。そこの学生は卒業時になると、京大生より高い英語力を身につけているでしょうか?

 

私大の中には英語なしで合否判定する大学・学科もあります。また、3教科受験して「高得点2科目」で判定する場合もあります。このような環境では実質的に入試科目から英語が外されていると考えてよいでしょう。では、そのような大学を受験し合格した学生は、その後4年間、楽しく前向きに英語に取り組み、中高6年間で学んだ語彙力を超えるボキャブラリーを身につけているでしょうか?


1. 試験がなければ学生は勉強しない。
2. 試験をなくせば学生は英語に前向きに取り組む。
どちらもhard evidenceに基づく見解ではなさそうです。英語教育や入試改革を論じる方は、少なくとも文部科学省のウェブサイトに公開されているPDFにはざっと目を通しておく必要があるでしょう。そうでないと、現実離れした理想論や極論に終始する恐れがあります。