もはや入試用問題集はいらない? ←クリック
最近は英語学習に役立つ便利なスマホアプリが沢山あります。「TED AudioBooks-無料で英語をリスニング、リーディング、TOEIC対策にも」もそのひとつです。高校生がこのアプリを使えば「やさしくたくさん」英語学習が可能でしょうか?ほとんどの高校生にとってTED Talksは「やさたく」どころか難し過ぎるので、私はお勧めしません。

 

高等学校学習指導要領(平成20年改定、25年4月より実施)によると、中学では1200語程度、高校で19単位取ると1800語を学ぶそうです。先月に高校1年生になった生徒が知っている英単語は1000語ぐらいでしょう。仮に、General Services List(GSL)の最初の1000語を知っていても、単語ベースではTED Talkの83.49%しか理解できません。固有名詞が4%だと仮定しても、なんとか分かる単語は全体の90%以下です。いくらアプリが便利だと言っても、これでは難しすぎて無理でしょう。

 

先月に高校3年生になった生徒は2000語ぐらい知っていると思います。仮に、GSLの2000語を知っていても、TED Talkの88.03%しか分かりません。固有名詞の占める割合が4%だとしても、理解できるのは全体の92.03%です。「やさたく」に向いた教材とは言い難いです。「やさしい・分かる」と実感するためには、未知語は2%以下に抑えることが望ましいです。

 

平成26年度英語力調査(高校3年生)の結果によると、リスニングに関して高校3年生の75.9%はCEFRのA1レベルです(Common European Framework of Reference for Languages)。B1~B2レベルは僅か2.3%です。この結果を踏まえると、高校生に適した「やさたく」リスニング教材は、グレーデッドリーダーズの朗読だと思います。たとえば、ピアソンのグレイデッド・リーダーズのLevel 1~3が適切ではないでしょうか。大学生でもTED Talksがやさしいと感じる人は少数派でしょう。

 

大学入試では、読解や聴解だけでなく英作文を課す大学もあります。TED AudioBooksが入試用問題集にとって代わることはありません。ちなみに、「TED AudioBooks-無料で英語をリスニング、リーディング、TOEIC対策にも」のVersion 1は2014年7月公開ですから、ほぼ2年前の話です。いずれにしても、教師が生徒の英語力と教材の難易度を正しく理解せず闇雲に「やさたく」を唱えても、期待した効果は得られません。

 

The TED word list: an analysis of TED talks to benefit ESL teachers and learnersから引用
TED Talks are very difficult not just because they speak at authentic speeds and intonation, but more specifically, because of the vocabulary used in them