from 師範代Shinya
(→前回の続き)
日本の職場で孤立していたアメリカ人男性Aさんと仲良くなった僕は、Aさんと一緒に週末に出かけるようになりました。
僕は車を持っていたので、ふだん電車では行きづらいような山奥など、色んなところにAさんを連れて行きました。
Aさんは、日本にいる間に日本カルチャーの代表であるアニメやゲームのメッカに行きたいと言っていました。
そこで僕らは、新幹線で東京の秋葉原に行って、一緒に初のメイドカフェを体験したりしました。
Aさんは他にも、「スケートリンクに行きたい」と言ってきたり、僕が想像しない場所に行きたがりました。
Aさんが行きたがっている場所に一緒に行くと、僕はこれまで自分が行ったことがない場所に行くことになりました。
日本にいるからこそ気付けない、外国人目線のスポットが分かりました。
場所結果的に、僕の視野と行動範囲は広がっていきました。
子どもが親の行動範囲を広げる
この時の体験は、僕がその後10年以上経ってから結婚した後に読んだ「子どもを持つのが怖い男性が読む本」に書いてあった内容と似ています。
その本には、これから父親になる覚悟がなかなかできない男性が感じている恐怖と、その対処法や考え方を変える方法が載っていました。
男性が子どもを持つことに対して感じる恐怖として、
①経済的な不安
②責任増大の不安
③自由時間を失う不安
の3つが大きいと書いてありました。
そのうち、③に対する考え方を変える方法が、印象的でした。
「子どもが親の行動範囲を広げて、親は新しい自由を得る」と言うのです。
「自由」の意味をとらえ直す
独身男性が失うことを恐れる「自由」の定義は、
・趣味を楽しむ時間
・仕事に打ち込む時間
・1人になって疲れを癒やす時間
です。
結婚することで、その時間が少なくなることは確かです。
さらに、子どもを持った場合は、もっとこれらの時間が少なくなります。
でも、その本には「子どもを持つと、自由の定義が変わる」と書いてありました。
その自由とは、
「これまで自分が体験したことがない世界を味わえる自由」
というものでした。
たとえば、
・保育園に出入りする自由
・運動会や授業参観などのイベントに参加する自由
・キッザニアなどの子ども用のテーマパークなどに出入りする自由
などです。
これらは、子どもがいなければ絶対に行く機会のない場所です。
「子どもがいるからこそ、それまで自分が行くチャンスのなかった場所に行き、経験できなかったことを経験できるのです。
一生のうちで、行く場所と体験の幅を増やす自由を、子育てによって手に入れるのです。
それはきっと、男性のあなたにとって楽しい冒険になるでしょう。」
というような内容が、その本には書いてありました。(記憶の範囲内で書いているので、細かい言い回しは忘れましたが、だいたいこんな雰囲気でした)
僕はその時には正直、
「別に保育園や運動会に行きたいと思わないしなぁ・・・自分が興味があってやりたいことではないけど。」
と1人で突っ込んでいました。
でも今の僕は、娘の保育園の発表会や運動会に全力を注いでいます。
本格的な業務用ビデオカメラにプロ用ガンマイクを装着した撮影機材を持ち込んで、娘のベストショット動画を撮ることに命をかけているのです。
大型のビデオカメラにつないだイヤホンを両耳に差して、リアルタイムで音割れチェックをしながら構える僕の姿は、周りの保護者からは「業者感」丸出しだと思います。
他のパパたちが僕の装備を見ると、2度見されます。
その直後に、少し僕から離れることが多いです。
おそらく「業者の撮影をジャマしちゃいかん!」と思われているのかもしれません。
確かに、僕は「業務用ビデオカメラで子どもの発表会をガチ撮影する」という、新しくて面白い体験をしています。
外国人目線で行きたい場所に行く楽しさ
これと同じ自由を、僕は当時の同僚のアメリカ人Aさんと味わうことができました。
日本人として生活していたら、まったく興味がわかなかった場所に行ったり、気付きもしなかった部分に注目したりするのです。
外国人の目線で見る日本文化は、僕に新しい発見と自由を与えてくれました。
そして、僕とAさんはとても仲良くなりました。
職場では、相変わらず他の同僚たちからキツく当たられていましたが、もう1人ではありません。
案の定、僕も一緒にキツく当たられる側になっていました。
でも、僕も1人でジーンズショップでいじめられていた頃と違って、Aさんと2人でいる心強さがありました。
ランチタイムは2人で外へ出て、モスバーガーで伸び伸び話しました。
その後、Aさんが本国へ帰ることになった時に、僕に向かって、
「シンヤがいなかったら、俺は間違いなく日本を嫌いになっていた。こんなに積極的に週末に出かけることもなかっただろう。でも今は、日本で良い思い出がたくさんできた。日本人に対するイメージも変わった。ありがとう!この記憶は、俺の中で一生残るよ。アメリカに来る時には、必ず声をかけてくれ!」
と言ってくれて、涙が出ました。
僕らはガッチリ握手&ハグをして、別れました。
それが、僕の人生で最初の「ネイティブの同僚」との体験でした。
・・・つづく。
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