VHS vs ベータ戦争や、一太郎 vs ワード戦争を例に上げるまでもなく、本来、性能だけで勝負をすれば、絶対に負けないはずの製品が実際には負けていることは、歴史を見ると往々にしてあります。
その背景には、マーケティングの巧拙もありますし、情感的な価値をどれだけ訴求できたかもあります。また、ネットワークの外部性をどれだけ上手く活用できるかも影響します。
日本ではVolkswagenがトヨタの車よりもかなり高く売られていますが、これは国内では情感価値を上手く訴求できていることに他なりません。欧州での価格は完全に逆です。
また、先に挙げたVSHや一太郎は、利用者が増えることによって製品そのものの価値が相乗的に増えるというネットワーク外部性の点において、競合の製品に負けました。
最近でいうと、イタリアの革製品ブランドであるValextra(ヴァレクストラ)の国内での弱さは、製品自体の機能や価値と比べて、実力を発揮しきれていない結果ではないかと思っています。
Valextraは国内ではマイナーなブランドで、販売店も限られていますが、ヨーロッパではそれなりにメジャーなブランドです。
イタリアのエルメスと呼ばれており、1品、1品を職人が手作業で作る丁寧さと、染色の鮮やかさ、革の質においては、他の高級ブランドを凌ぐだけの価値があります
![外資系 戦略コンサルタントの着眼点-Valextra1](https://stat.ameba.jp/user_images/20110510/01/eigo-gogo/72/f2/j/t02200164_0800059811218825062.jpg?caw=800)
(仕立ての良さと染色の鮮やかさのクオリティは高いです。)
![外資系 戦略コンサルタントの着眼点-Valextra2](https://stat.ameba.jp/user_images/20110510/01/eigo-gogo/43/f1/j/t02200121_0440024211218825060.jpg?caw=800)
(ビジネスバッグをValextraにしたいと思っていますが、25~30万ぐらいするので、さすがに躊躇します。)
ブランドロゴを外部に出さないというポリシーがあるため、あまり目に触れることは少ないのですが、ヨーロッパではセレブリティもそれなりに利用しているブランドです。
日本ではまだ芸能人の利用も少なく、マーケティングコストもかけられていないため、マイナーなブランドを出ていないのですが、革の質感と染色の鮮やかさは、持っているだけで気持ちよくなります。
と、ここまで機能性も含めて一押しなのですが、本来持っている質や機能性を十分に発揮できずに拡大を出来ていないブランドです。
こうしたことから感じることは、どんなビジネスでも、競合との比較の中でひたすらユーザビリティや品質を向上させていったところで、それだけでは勝利は覚束ないということです。
むしろ、より戦術的なところも含め、どのように認知を集め、拡大に向けたクリティカルマスを実現するのかを考えることが、機能性の検討と同じぐらい大事になるということだと思います。