夢を失う30代 | 外資系 戦略コンサルタントの着眼点

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戦略コンサルでマネージャーを務める筆者が日々の出来事を独自の視座で書き綴る


日経ビジネスオンラインで「30歳社員問題」として、30歳ぐらいの社員が夢を失ないつつある状況について述べられています。

簡単に言えば、大量のバブル入社組が上に詰まっている中、ポストが足りなくなることで昇格が難しくなってきており、また成果主義がもて囃された世代であるため、同期の間でも差が見えており、仕事に対する不満も表面化しやすくなっているという状況です。

確かに前職の同期と話をすると、以前と比べて次のポジションへの昇進が難しくなっており、同期の間での競争が厳しくなるし、一方で給与は頭打ちになりつつあるしという状況で、閉塞感が漂ってきます。
(ちなみに昨日も銀行での昇進の仕組みの話に触れました。こちら 。)

そろそろ課長になる世代なのですが、人によってそこに近い人とまだ遠い人がいるようで、飲み会で同期と話をする際にも、「そろそろ課長になったの?」という無邪気な質問をするとその場が凍りつくこともあり、なるべく触れないようにしています。

30歳社員問題」は、年功序列と終身雇用による仕組みが、市場が成熟している中でいよいよ限界を迎えているということを示しており、少なくとも年功序列の仕組みを変えていかないとこうした閉塞感は打ち破れないように感じます。


難しい点は、年功序列を変えるための明確な昇進の基準の納得性をどのように担保するかという点と、その基準に合わない人たちをどのように待遇するかという2点です。

戦略コンサルの場合、昇進のための要件がスキルセットも含めかなり明確に定義されており、例えば「もっと顧客を巻き込んで顧客を動かせるようにならないとプロモーションは出来ない」とか、「ロジカルシンキングによって論理の組み立てを強化できないと難しい」とか、何が出来ないと次に昇進できないのかを、かなり明確に各人に伝達します。

全てのランクへの昇進基準は入社時に渡されますし、君はこの基準を今後達成していかなくてはいけないというコミュニケーションも行われます。

その上で、それでも長い間基準に達せない場合、他の組織に行くことをお勧めすることにもなるのですが、そうした可能性を考えて準備をしますし、そもそも終身雇用という考え方を入社するコンサルタントが持っていないので、次に移る覚悟をしながらみんな働いています。

伝統的企業の場合、基本的には仕事が出来なくても企業は囲ってくれるだろうという、ある意味甘い見立てもあるため、基準に合わない不幸な人たちをずっと組織に置いておくことになります。

結果、そうした人たちのモチベーションは下がりますし、転職市場もいつまでたっても流動化せずに、不健全な市場が存在してしまいます。

そう考えるとかなり構造的な問題が多く、突然成果主義を導入して対症療法で対応するのではなく、そもそも採用時の意識の変革から取り組んでいかないと、少子高齢化の進む社会では、この問題は常に新しく再生産され続けることになります


先日、他の国の同年代ぐらいのビジネスマン数人と話をした際に、“Seniority system(年功序列)”と“Lifetime employment(終身雇用)”について、「え、そんな制度がいまだにあるの?」と驚かれましたが、国際的に見れば徐々にそういう位置付けになりつつあります。

こうした仕組みは成長を続ける本当の優良企業でしか存在し得ないということを認識していかないと、いつまでも「30歳社員問題」は存在し続けることになりそうです。