出かける理由作家が温泉に出かけたのは、①原稿を書く静かな環境、を求めてであり、②温泉が執筆で疲れた脳をいやしてくれるから、である。入気作家ならば、③ときどき愛人が泊りにきてくれるという便利さもあるし、④現地調達で色っぽい芸者とねんごろになることもある。川端康成は、この手で、⑤芸者をモデルに小説(『雪国』)を書いてしまうしぶとさを見せた。温泉へ行って「駒子」のような可憐な芸者といい仲になることは、男はみんな夢想するが、普通の旅行客が一日や二日泊ったって、そんないい思いができるわけがない。