今週の木曜会は初登場の大黒屋(おおぐろや)真由(まゆ)先生でした。

 

「ナンバ歩きをご存知ですか?お父さんがお元気な時に、良く此処に来てくれたんですよ。良さは分かっていても、ナンバ歩きをすると30歩位で元の普通歩きに戻っちゃうんです」と司会の田村もナンバ歩きの難しさを実感したようです。

「ナンバ歩きには効能があるらしいんです。今日は娘さんが代わりに来てくれましたので、お話を聴きたいと思います」と田村の紹介でスタートしました。

 

先生は草履(ぞうり)をはいて登場。それを見た田村が

「草履はいていて寒くない?」と尋ねると先生は

「ナンバ歩きには草履が良いんです。ナンバ歩きはつま先から歩くんですよ。つま先から歩くということは、自然に肩も前に出ることになるんです」

例えば草履をはいて草履が脱げないように右のつま先からゆっくり歩いてみると、自然に右肩も前に出ることになります。靴だとどうしても(かかと)から先に地面につけて歩くことになり、意識しないとなかなかナンバ歩きは出来ないそうです。

 

ナンバ歩きは後程詳しくご紹介するとして、簡単に先生のプロフィールをご紹介致します。

幼少期から新体操を始めオリンピックを目指すほどの実力を持つ中、ストリートダンスに出会います。2015年にストリートダンスアジア大会で優勝。同年亡き父、大黒屋宏芳氏が広めていた日本古来の歩き方と言われているナンバ歩きとHIPHOP を融合させたナンバdeダンスプロジェクトを始動します。

マクドナルドのCMダンスを手掛けたり、歌手の椎名林檎さんのバックダンサーも務めたことがあります。現在ナンバ歩きは勿論のこと、ナンバストレッチを世に広める活動を行っています。

 

最初に先生はマイケル・ジャクソンの曲に合わせて、お得意のHIPHOPダンスを披露して下さいました。切れの良いダンスにお客様から大きな拍手が沸き起こりました。

 

昨年10月、フジテレビ「アウト×デラックス」にご出演された時の映像が、場内のモニターに映し出されました。

「ナンバ歩きで川越を覚醒させたとは?」というタイトルで、川越で活動中の先生の姿に、テレビの出演者も感心している様子でした。

 

「ナンバ歩き」は、能、歌舞伎、相撲、柔道などにも使用されており、右手と右足、左手と左足をそれぞれ同時に出して前に進む歩き方です。最近はさらに、ナンバ歩きが脳を活性化することも分かってきました。身体の右半分は左脳、左半分は右脳が司って(つかさど)いますが、現在の歩き方では右脳と左脳の両方を常に働かせ続けることになります。しかし、ナンバ歩きでは、右手足を出した時、左脳は働くが、右脳はほんのわずか休憩できます。左手足を出した時には、逆に左脳が休憩します。一瞬に過ぎないですが、そのリズムが、脳の神経に刺激を与え、脳全体の働きを高めます。こうしたナンバ歩きの特長を採り入れ、アスリートの新たな能力開発、そして高齢者の認知症予防にもなる歩き方だと認識され始めています。

 

埼玉県川越市では先生の働きかけにより「ナンバ歩き」を認知症予防のプロジェクトとして組み込まれることになり、認知症予防のための高齢者だけでなく、0歳から120歳までのファミリープロジェクトとして、‘皆で脳を活性化していこう’と、先生は普及に力を入れています。

 

阿波踊りもナンバ歩きと同じで、本来の日本人にとっては自然な動きだったそうです。ところが、帯がなくなり、草履がスニーカーに替わるなど西洋の様式になると、軍隊や小学校で行進などのトレーニングをされて来たことにより、現在の歩き方が身体にしみついてしまったそうです。踵から歩くのとつま先から歩くのでは身体に掛かる付加が1.5倍違います。つま先から歩くと身体にやさしいし、腰もねじらない。現代の歩き方は腰をひねって歩いているので、腰痛やひざ痛に成りやすい。ぜひ身体の方向を揃えて歩いていただきたい。そこで、少しでも楽にナンバ歩きをする為に先生が編み出した方法。それは‘身体の後ろに両腕を回して手のひらを腰の上で組み、歩く’とナンバ歩きになるそうです。

 

2000年に先生の父親、大黒屋宏芳氏が「歩行道普及協会」を設立。2018年11月11日に亡くなります。先月の木曜会に江本勝先生の意志を継ぐI.H.Mグループをお迎えしましたが、その江本先生の雑誌「Hado」にも宏芳氏とナンバ歩きが紹介されたそうです。

2020年のオリンピックにはナンバ歩きを広めたいとの宏芳氏の思いを継いで、先生は活躍中です。ナンバ歩きを世の中に広げようと動いたために、TVなどの企画が決まりました。最近では川越だけではなく、町田でもプレジェクトが始動されることになったそうです。

「動いた分だけ伝わる。思っていただけでは駄目。何も伝わらない。動かなければ…。どうせ動くならばナンバ歩きをして、脳を動かして更にアイデアを生み出しながら動いていったら、もっとより良いものに繋がるのではないでしょうか? 行進歩きからナンバ歩きに変えれば、脳の働きも変わるので、人生も変わります」と先生。

 

最後に場内のお客様と共に、ナンバ歩きとナンバストレッチを実践していただきました。ナンバストレッチは手ぬぐいの両端を左右の手のひらで持ち、持った両腕を高く持ち上げ、ストレッチします。手ぬぐいを持つことによりナンバの所作に繋がるそうです。両腕を高く持ち上げているだけで、とてもきつい動作ですが、背筋も伸び、普段使用しない筋肉にも効果的でした。

 

「お父さんを越えた歩き方を作り出したのよ。そういう意味では江本先生の息子さんたちも凄いことやってるよね。子供が親のことを引き継いだ上に、更に上いっちゃってるの」と田村も感心した様子でした。

 

先生、お客様、有難うございました。

                     (令和2年2月22日 古谷 記)