最近、近所にできたK弁当屋の接客は完全に中国語であった。
ここら辺りがどんなに国際化しようとも、中国人をターゲットにした料理屋だろうとも、接客はとりあえず日本語が普通だ。

内心面食らったものの、日本人店員では絶対にかもしだせないような無垢な笑みにオレは店を後にすることができず、適当な弁当を選んだ。

はっきし言って、一年間教育テレビ見たくらいのスキルではネイティブ外国語など全く耳に入ってこない。
がしかし、こちとら伊達に世界一周しとらんのじゃ、言葉なんぞわからんでもこっちが通貨を理解して値札がついてりゃ買い物なんざ誰でも可能なんじゃボケッ!
とココロの中のオレは息巻いたものの、ここでひとつ疑問が、、
海外の多くの国は日本のように気の利いた「お釣り減らし支払い」に対応できないのだ。
※ 「お釣り減らし支払い」とは例えば380円の弁当を買うのに530円払い、150円のお釣りをもらうという日本では当たり前のテク

オレは中国本土には行ったことないので、この店員に530円出していいものかどうか逡巡。
……おおっと危ない、すっかり海外旅行気分にされてしまっていたが、ここは家から3分の距離ではないか。向こうのペースに乗せられてはいかーん。
(オレは近所のローソンで二千円札を出したら、その中国人店員があせって奥の別の店員を呼んできたという経験がある)

オレはエィ!と530円をトレイに置いた。

店員は一瞬固まった。
「しまった! 非対応――!」
と、30円をサイフに戻そうと手を伸ばそうとしたところ、
店員はぎこちなくレジを打ち出した。

「アッリガトウゴッザイマシターッ」

が、店員が手にしていたのはやはり100円硬貨1枚と10円硬貨2枚であった。
「チィィッ!!」と桜木花道の実力を過大評価しすぎたばかりに自身で無茶なリバウンドをとりにいくしか道のなくなった赤木剛憲のように、オレはトレイの自分の出した30円を取りにいこうとした。刹那……、
店員はオレの手を差し止め、自分の手にしていた120円をトレイにジャラリと置いた。
そして、自分の置いた10円硬貨2枚とオレの置いた10円硬貨3枚をまとめてさらい、それにレジに入れ、その引き換えに50円硬貨1枚取り出し、トレイの100円合わせてオレに150円渡したのであった。



筆者が恋に落ちたのは言うまでもありません。
釣銭がなんだっていうんですか?
Tポイントがどうしたっていうんですか?

そういえば明日は韓国料理食いに行くのであった。
マジッソヨ。
ルチャリブレ?
最近、T田屋にはホワイトボードが登場。

なまぐさな店だったくせに、
日替わりメニューなんぞボードに手書きで掲げ出した。

「山芋浅漬け」
「三つ葉のおひたし」
「冷やし蒸し鶏」
…etc

むぅぅ、新鮮だ。どれも興味深い。
この店に尻尾は振りたくないところではあったが、
思わず「冷やし蒸し鶏」を頼んでしまった。


「ハーイ。冷やし蒸し鶏、ヤマでーす」
中国人留学生がたどたどしい日本語で叫ぶ。

ほほう、どおやら我輩が最後であったわけだ。
時刻はまだ6時すぎ、相当な人気であったのだろう。
ホワイトボード特有の、店員がボードの文字をすたすたと消しに向かう。

オレは、やや恍惚を浴び、頬杖をついてボードに注視、
店員は「冷やし蒸し鶏」の一行を上から下へササッと一気に消すのだ……。


がしかし、チャイナ子が消したのは「冷やし蒸し鶏」の文字のうちの「鶏」だけであった。
そして、刹那その空いたところに、ななななんとおもむろにマーカーで、「豚」と書きやがった!!

冷やし蒸し豚ぁ!?
ふ、ふざけるなーッ!!
オレは麻雀放浪記の鹿賀丈史よろしく仁王立ち……、
するわけでもなく、つつましく冷やし蒸し鶏をつまんだ。


うん、うまかったよ。
今度、ボードに「冷やし蒸し鶏」を見たら、「豚で」と頼んでみようと思んだ。
うん、そして、豚が無いからといって牛になることはないよ。

今まであの店で牛肉見たことないもの。
電車内、とある見ず知らずの女性が俺のことをまじまじと見つめていた。
が、えてしてこういうとき相手は、俺を隔てた別の輩を標的としているものである。
だがしかし、俺の背は壁であり、竹野内豊の気配はない。
もしやと思い車内が空いてきた頃合をみて俺は体を幾分横に移動させてみる。

女の視線は俺を追ってはこなかった。
そう、女の視線は壁に釘付けであったのである。
そこに貼ってある中吊りにはこうあった。

「お金の科学」
「累計50万部突破」
「幸せをつかむための7つの法則」

うーん、7つの法則とは?
お金が科学で貯まるのか?
渋谷からブクロまでが、あっという間であった。

案外、人はこうやって宗教にはまっていくのかもしれない。