我輩は喧嘩は嫌いである。
 
しかし、相手が攻撃してきたり、飼い主を脅かそうとしたら戦うのにやぶさかでない。何も考えずに敵と戦う。相手が我輩より強かろうと狡猾であろうと関係ない、全力で戦うのじゃ。元が狼の子孫じゃから、
 
攻撃的なのは本能なのじゃワイ!!
 
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「同志少女よ敵を撃て」逢坂冬馬 著 早川書房発刊
 を読みました。
 
昨年(2022年)の本屋大賞受賞作で、図書館で予約して待つこと1年以上でようやく入手しました。
 
 1940年代の独ソ戦の女性狙撃兵の物語です。ソ連の牧歌的な村で育った猟師の少女が、突然ドイツ軍の孤立部隊に襲撃され母親も含めて村人は皆殺しされ、ソ連赤軍の女性狙撃隊長が少女を極限状態にまで追い詰めて狙撃兵に志願させて育てるところから始まります。本当にすごい迫力の戦争小説でもあるのですがそれは背景のせいで作者の意図ではないのです。少女の周辺の人、敵の人物描写が克明で圧倒されますし、しかも史実に忠実であろうと努め、狙撃手の訓練の精緻さ、実戦のリアルさ、心理作戦の駆け引きが具体的で一気に読まされてしまうヒューマニズム(フェミニズム)小説でした。
 
 この大作が36歳の作家のデビュー作と知り、また驚かされました。それまではネット小説系で腕を磨かれていたようです。インタビューの様子では10年程度の苦節?の時代を糧にして、史実を読みあさるだけで半年もかけている等 ”本物を追求・模索する姿勢”のオーラが漂っていました。只者ではありません。
 
 戦争小説は 敵と味方、正義と欺瞞、人間の弱さ、残酷さを際立てせますが、この小説はもっともっと複雑な状況を克明に描き続けており、根源的なテーマである「なぜ戦争で人を殺さねばならないのか?」「敵とは一体誰なのか?」「戦争が終わったらどうなるのか?」といった内容にも食い込んで、示唆に富むエピソードが満載です。そして女性兵士の当時の位置付けを具体化して「愛する人を見つけ、生きがいを見つけるのが人生」だと優しく説明するようでもあります。
 
 また懐かしい言葉が飛び交います。コルホーズ、ソホーズ、ボルシェビキ、スターリングラードの戦い、、、。そして、スターリン、ヒトラー、、、、4年に満たない独ソ戦争で、ドイツは900万人、ソ連は2000万人以上の人命を失った。細かく読めばウクライナとソ連の微妙な関係にも食い込んでおり、現在のウクライナ戦争の複雑さも”偶然ながら”顕になっていた。
 
 本当に凄い小説でした。細かい辻褄合わせなど、全く気にならないほど、熱い内容でした。まあ、これが何故「アガサ・クリスティー賞」なのかは判然としないまま終わってしまいましたが、
ミステリー小説ではなくサスペンス小説でしたね。
 
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なぜか株は好調です。そのうちチャブ台返しが来そうな予感もしますが、当面の幸運を謳歌させていただいています。株はそんなに甘くないはずです!?