はじめての自己主張 | ブリスの自己主張(盲導犬ブリスと犬の気持ちがわからないユーザーとのユニット)

ブリスの自己主張(盲導犬ブリスと犬の気持ちがわからないユーザーとのユニット)

盲導犬ブリスと犬の気持ちがわからないユーザーとの生活・・・


⭐︎はじめての自己主張


共同訓練中、ブリスと江ノ島ハーバーまで続く道を歩いた。

7月の中旬であったが、ずっと曇りが続いていたので、アスファルトの熱さを忘れていたが、その日は久しぶりの晴天。

歩行中、いきなりブリスは立ち止まると、前足の片方を私の足の甲に乗せて、合図のようにトントンと軽く叩いて何かを訴えるのだ。

最初はわからなかったが、やっと地面が熱いことに気がついた。

ちょうど先代の靴を持っていたので、慌てて履かせた。

「靴は好きじゃないけど熱いよりはいいかな」って、そんな風に歩いていた。ごめんごめん、ブリスちゃん。

「もっと早く気が付かなきゃ、ユーザー失格」とおもったかどうかは知らないけれど、訓練中から鋭いブリス。

江ノ島ハーバーではイタリアンレストラン「とびっちょ」のしらすピザでランチ。午後は2階のフリースペースで、訓練士から講義を受ける。ocean viewの中での受講は思い出深いが、その内容を覚えていないのが情けないかな。



⭐︎2頭めって辛いかも


ブリスとの共同訓練は自宅からのスタート。センターでの訓練は一週間後からであった。

その時一緒だったのは富山県在住のmさん。今回は7頭めの訓練だという。

食事をしながらの会話はなぜか前のパートナーの話になる。

mさんの先代は皮膚病がひどくなってのお別れだった。

薬代やフード代も高いし、病気は治らない。

「昨日は富士ハーネスに連れて行ったんですよ。昨日まで一緒だったんです」と悲しげである。

こちらも先代が急逝したための2頭めで、二人共に先代の思い出話をしみじみと。そして、そこには、パートナーへのハッピーリタイアをさせてあげれなかったことへの呵責のような無念さのような、そんな気持ちも含まれていた。

そんな会話をテーブルの下で聞いていたのは訓練中のきんちゃんとブリスちゃん。

「もしかして、2頭めって、先代と比べられるし辛いのかしら」

しかし、このキン・ブリ達のユーザーはこうも思ったのである。

この子達にはハッピーリタイアをさせて、pwさんのもとに返してあげるからね。



⭐︎ブリスが吠えた


訓練中のことである。

茅ヶ崎美術館では、「美術館へ続く道」の展覧会オープンの前日、ブリスと一緒に説明を聞きながら案内をしてもらうという、なかなかハードな訓練をしていた。

ブリスはヒールしたまま手引きでゆっくり歩き、作品の前では立ち止まり説明を聞く。そんなことを40分ほど繰り返していたら、いきなりウォン!と一声吠えた。

盲導犬が吠えた!

一番びっくりしてショックを受けたのは、たぶん私だろう。

吠える犬は苦手なのだから。

慌てて訓練士を見ると、「きっと疲れたのかもしれない、それとも静かだったから、こわくなったのかな」と言った。

吠える声を聞いてしまった私としては、次はいつ吠えるかと思うとそれだけで心は穏やかではない。いつ爆発するかもしれない爆弾と歩いているような気がしてきた。

センターに戻るとちょうどt理事が食堂にいたので、ブリスが吠えたことを伝えると、「犬は吠えるんだよ」と言う。

先代は吠えなかった。鼻鳴らしもしなかった。ガウガウと声も出さなかった。それを考えると、リルハは犬ではなかったのかもしれない。

そして、今側ににいるのは、自分の長い尻尾をおいかけてクルクルと回っている元気の塊ブリスちゃん。



⭐︎ブリスが食べちゃった


デビューしてまもない頃だ。

ピッコラくらぶでの活動中、海から戻って休憩していると、さっそくおやつの時間。シフォンケーキのお皿がローテーブルに置かれた。

そのテーブルの脚には待機中のブリスがつながれていた。

誰かと話に夢中になっていると、「ブリスが食べた」と驚きの声。

続いて「本当だ」と笑いがおこる。

そこには半分以上無くなったケーキのお皿と、何ごともなかったような顔のブリスちゃん。

盲導犬はそんなことはしない。そう思っていた人たち&ユーザーは、例外もあることを知った。

シフォンケーキ、良いお味でした。

あの時「ノー」と注意されてから、一度もユーザーのお皿からのつまみ食いはないけど、拾い食いはたまにする。床に落ちていた柿の種をぺろりと口に入れたが、すぐにペッと吐き出した。ブリスちゃんは辛いのは苦手のようだ。



↑茅ヶ崎美術館にて