社員10人の会社で、1人あたり年間5日休むだけで、のべ50日。
営業日を240日とすれば、およそ5日に1回は「誰かがいない日」が発生している計算になります。
これは特殊な想定ではありません。有給、体調不良、家庭の事情。ごく普通に経営していれば必ず起きることです。
問題は、その「誰かがいない日」に、どれだけの業務が止まっているか。数えたことはあるでしょうか。
担当者が一日休むだけで止まる業務の正体
マーケティング担当のAさんが休んだ日を思い返すと、止まっていた業務は意外なほど具体的です。
- メルマガの配信設定と最終チェック
- SNS投稿の作成と予約
- 広告レポートの数字の取りまとめ
- LPの文言修正
- 問い合わせ対応の一次振り分け
どれも「Aさんしか手順を知らない」「Aさんしかアカウントに入れない」という理由で止まります。
そして翌日、Aさんは2日分の業務に追われ、本来やるべき企画や分析はさらに後回しになる。この繰り返しです。
私が多くの中小企業のマーケティング現場を見てきて感じるのは、止まる業務の正体は「難しい仕事」ではなく「その人に張り付いた定型作業」だということです。
止まる業務リストが映し出す属人化の構造
「属人化が課題です」と言葉で語るのは簡単ですが、実態はなかなか見えません。
ところが「誰が休むと、何が止まるか」をリストにした瞬間、属人化は目に見える形になります。
止まる業務が多い人ほど、組織の急所です。多くの場合、それはエース社員か、経営者自身です。
「結局、私がやった方が早い」と引き受け続けた結果、経営者が一番止められない存在になっている。決裁権を持つ方ほど、この構造にはまりやすいと感じます。
さらに深刻なのは、このリストの中身の大半が、判断力を必要としない反復作業だという点です。
会社で一番人件費の高い人が、一番仕組み化しやすい作業を抱え込んでいる。これが属人化の本当のコストです。
止まった順番がそのままAI化の優先順位になる理由
「AI導入は何から始めればいいですか」というご質問を、私は本当によくいただきます。
流行りのツールから入ると、たいてい失敗します。目的のないツール導入は「覚える作業」を増やすだけだからです。
一方、「担当者が休んだ日に止まった業務リスト」は、優先順位を考える必要すらありません。
なぜなら、このリストには3つの条件がすでにそろっているからです。
- 止まると実害が出る(=効果が測りやすい)
- 手順が決まっている(=AIやシステムに移しやすい)
- 特定の人に依存している(=移した瞬間にリスクが消える)
「AIで何ができるか」から考えると迷いますが、「何が止まったか」から考えると迷いません。
止まった順番が、そのままAI化すべき順番です。上から順に仕組みへ移していけばいいだけです。
エース社員が抜けても回る仕組みへの置き換え方
よくある対策は「マニュアルを作って誰でもできるようにする」というものです。
もちろん無意味ではありませんが、マニュアルは読む人の時間と習熟を前提にします。人手不足の現場では、読む側も教える側も余裕がないのが実情ではないでしょうか。
私がおすすめしているのは、順番を変えることです。
「人に引き継ぐ」前に、「仕組みに引き継ぐ」。
エース社員の判断基準、文章のトーン、チェックの観点。これらを言語化してAIに持たせれば、その人のやり方を保ったまま、定型部分だけが自動で回り続ける状態を作れます。
エース社員から作業を取り上げるのではなく、作業だけを仕組みに移し、その人には判断と企画という「人にしかできない仕事」に集中してもらう。これが、抜けても回る組織への現実的な道筋だと考えています。
変革は足し算ではなく引き算から始まります。新しいスキルを覚えることより、今ある業務を人から剥がすことが先です。
今日できる第一歩は止まる業務を書き出すこと
難しい準備は要りません。今日やっていただきたいのは、たった一つです。
「あの人が明日休んだら、何が止まるか」を、名前ごとに書き出すこと。
経営者ご自身の名前も、必ず入れてください。おそらく一番長いリストになるはずです。
そのリストが完成した瞬間、御社のAI化のロードマップは実質的に完成しています。あとは上から順に、人の手から仕組みへ移していくだけです。
私たちエイトハブでは、マーケティング実務をAIが代行するプロダクトを提供しています。無料トライアルは、何かを覚える場ではなく、書き出したリストのうち「どれが消せるか」を実際に確かめる場としてお使いいただけます。
担当者の休みに怯える経営から、誰が休んでも回る経営へ。
その分かれ目は、今日書き出す一枚のリストから始まります。
