JR水戸線の笠間駅を降りて、国道355号を1.5kmほど歩いて行ったところに笠間稲荷神社はあった。この日、神社で節分の豆まき行事が行われるという。

 

ごく普通の地方の町。感性の乏しい自分にはそんな風に見える。こういう機会がなければ足を運ぶことはなかったはずだ。

 

神社に着くと、屋台が並んでいてちょっとしたお祭りのような雰囲気を感じる。境内には多くの人がごった返していて、豆まきを待ち構えていた。

 

人々の目の前には櫓がある。そこから豆だったり、お菓子だったりを集まってきている人たちに投げ入れるのだろう。

 

これと似たことを和歌山城西ノ丸で体験したことがある。WBSまつりという地元のラジオ局主催のイベントだ。

 

その時はイベントの終わりにミニライブがあって、そのあと餅撒きが行われ、集まった人たちが取り合っていた。

 

そんなことを思い出しながら待っているうちに、撒き豆行事が始まった。櫓から豆や袋入りのお菓子などが投げられると大騒ぎになる。

 

私は後方でその様子を眺めることにした。こういうことに不慣れなので、取り合いの中に入ったら押しつぶされてしまうかもしれない。

 

そういうことを想定しているからか、警備の人が「しゃがむ方が見た場合は、強制的に立たせます」という注意喚起をしている。

 

そうしているうちに、何だかタイムスリップでもしたかのような不思議な気分に浸されている気がしてきた。

 

見知らぬ街。この場に知り合いは1人もいない。私は1人異世界にでもいるかのようだ。喧騒は外国の市場で知らない言語が飛び交っているかのよう。

 

 

そういえば、こうして訪れる町は、誰もが知るような有名な観光スポットとは限らず、情報も少ない。

 

数年前にあちこち出かけて行った町々は、そんなところも多かった。そのたびにちょっとしたことに驚かされるのが常だった。

 

数年の間に忘れかけていた感覚がより戻されてきた。そのことを思い出して、また1つ取り戻したかった過去を追体験することが叶ったのだった。