福島県浪江町の畜産農家、

吉沢正巳さん。

12年前の原発事故で被ばくし、

国から任意の殺処分指示が出た肉牛たちを

今も飼い続けている。

 

 

震災当時、

330頭の肉牛を飼っていた吉沢さん。

避難指示が出されたが、

牛の世話をするためにとどまった。

全滅、餓死…生き地獄を見た。

 

 

他の牧場で生き残った牛も譲り受け、

飼っている。

 

 

エサ代は

寄付やボランティアの協力でまかなってきたが

時が経つにつれ社会の空気は変わり、

寄付も少なくなっている

ーと。

 

 

肉牛農家は

(豚も鶏も他の生き物を扱う人々も)

“命” と、どう折り合いをつけているのか

いつも想像していた私。

 

何も考えていないのか?

 

それとも

送り出すたびに悲しみ、リセット

というルーティンを繰り返すのか?

 

 

吉沢さんの言葉に

耳が震えた。

 

 

「生きてる事が意味あるんだよ。

俺も人間で生きてるし、

牛たちも死んではいない。

生きてる」

 

そして

 

「あらゆる矛盾を抱えながら、

矛盾とともに、生きるんです」

 

 

矛盾とともに。

 

可愛がっているけれど

仕事だから割り切っていた。

 

しかし

震災があり

出荷できなくなった牛たちと

やっと

愛情、それだけの気持ちで

やっと

向き合うことができたのではないか。

 

 

 

勝手に腑に落ちて、滲んでいる。