1940年代に新聞小説として発表された、横溝正史のレアな家族小説。
長らく本として世に出ていなかったが、2018年に単行本、2021年に文庫本として出版された。
三上延の『ビブリア古書堂の事件手帖Ⅱ』で、この『雪割草』が題材にされており、是非読みたいと思った。
主人公は、上諏訪の有力者の娘・有爲子。
母親はすでに亡くなっており、父親が実の父でないことが噂となり、婚約直前で破談となる。その父も亡くなり、孤独な身となった有爲子は、実の父を捜しに東京へ。そこでも人に騙されるなど、不幸につぐ不幸で、まるで「おしん」のようだ。どうなるかが気になって引っ張られる。
戦時中の小説で、馬まで出征するシーンがあるのは驚いた。夫となる画家の風貌が、金田一耕助のプロトタイプというのが定説となっているようだ。