トウキョウソナタ(2008年) | 勝手に映画紹介!?

トウキョウソナタ(2008年)

トウキョウソナタ


【鑑賞日:2008年10月01日】

シネコンのファーストデイサービスで「トウキョウソナタ」を鑑賞してきた。黒沢清がリストラされたサラリーマンの一家を襲う、悲哀に満ちた日常を…シニカルに描いた話題作で、カンヌ映画祭“ある視点”部門で審査員賞を受賞したそうだ。

有名計量器メーカー(実名で登場のタニタ)を突然リストラされてしまった佐々木竜兵…家族にリストラの事実を言いだせないまま、毎日、会社に行くふりをしながら、ハローワークに通い、昼は公園で食事の配給を受けていた。そんなある日、学生時代の同級生・黒須と再会するのだが、実は黒須も同じように会社にリストラされていたのだ…。一方、竜兵の家族もみな、それぞれ言い出せない秘密を抱えて生活をしていた…。

チャランポランなフリーター生活なんかしている身分だと、あまり笑えない映画。家族に真実を言いだせないリストラサラリーマン…毎日、背広を着て、アタッシュケース持って、忙しく携帯電話をやりとり。でも、それは仕事をしているフリをしてるだけ。ハローワークへ行っても、会社の面接に行っても…理不尽な思いばかりさせられる。

映画だから多少は過剰に、面白可笑しく描いているわけだけど、ハローワーク通いしたり、中途採用の面接なんかに行ったことがある人間が見れば、人事ではすまされないけっこうリアルな現実が描かれているので、ブルーになる。劇場では、そんなシーンをゲラゲラ笑いながら見ているオバチャンが何組もいたが…もしかしたら、お宅の旦那だって、実はこういう状況に陥ってるのかもしれないぞ?給料と偽った失業手当で、のうのうと映画なんか見てるんじゃないの?と言ってやりたくなった。

香川照之が演じたリストラサラリーマンが、社会への不満を吐露するシーンなんて、けっこう共感しまくりだった。だけど、逆に成功者から見れば、ただの甘えにもみえるわけで、そういうのが理解できるから、けっこう自己嫌悪に陥ってしまったりもする。

サラリーマンのお父さんは、家族に愚痴の一つでもこぼしたいけど、プライドがそれを許さない…。でも、秘密を抱えているのはサラリーマンのおとっつぁんだけじゃなくて、主婦にも、小学生、大学生の子供にも…自分の世界で、同じような悩みや秘密を抱えているんだということも描いてるわけで…みんなが、ギリギリの上っ面だけ接し、一見、平和な日常が築かれていたんだけど…ひとつボロがでると、あっけなくそれが崩れだすという…家族の崩壊のはじまりはじまり。

後半は、黒沢映画らしい…シュールでブラックユーモアもたっぷりな、ちょっと現実離れした設定や展開も用意されていて、一応、家族の再生へ話が繋がっていく。ちょっと安易かもしれないが、現実だけを突きつけられて、ブルーになりまくるよりは、良かったのかなぁと。後半のギャグっぽい部分は、けっこう素直に自分も笑えたかな。

小学生の次男坊がピアノを習いたいと言い出したのは、てっきりピアノ教室の女の先生(井川遥)目当てかと思っって、マセたガキだなぁとか思っていたら…本当に純粋に、ピアノが習いたかったみたいだね(笑)


監督:黒沢清
出演:香川照之 小泉今日子 小柳友 井之脇海 井川遥 津田寛治 児嶋一哉 役所広司


【ノベライズ小説はこちら】
トウキョウソナタ(竹書房文庫た1-1)
トウキョウソナタ










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