本作は2005-2009年にボリビアのとある村で実際に起きた事件を元に書かれた小説
「woman talking」を原作とし、
10年ぶりにサラ・ボーリーが脚本・監督を務めた映画である。
2022年のアカデミー賞の脚本賞を受賞しているとおり
話の進め方が独特であり
きわめて難しいテーマを、きわめて難しい事情を絡めながら描く。
物語の舞台は2010年
キリスト教を信仰している とある小さな村で
朝に目を覚ますと足がアザだらけになっている女性たちの悲鳴から始まる。
女性たちはそのアザや傷が悪魔のしわざと信じ込まされていたのだが
ある日、犯人の顔を目撃した少女が出て、村の男が複数逮捕されることとなる。
男たちが釈放されるまでの48時間
女性たちは3つの選択肢のなかで揺れる。
①男たちを赦し、変わらず村で暮らす
②男たちと戦う(赦さない)
③村を出る(赦さないが、戦いを避ける)
そこからは、村の代表として納屋に集まった、女性8人の対話劇で構成されていく。
ただその場にひとりだけ、書記係として心優しい男が加わっていて、
彼の存在によってこの物語の本質が、女性の権利だとか性被害者の権利だとかに留まらないということを示唆していると感じた。
物語の設定は2010年ではあるが
女性たちは読み書きを知らず、男たちに常日頃こき使われ、ありとあらゆる暴力を受ける生活を強いられている。このことから、この設定自体がメタファー的要素が強いということが伺えた。
映画としては、劇的な展開はないし
穏やかな美しい風景のなかに建つ、灰色の納屋のなかでの対話劇という
少々薄暗い画が続く とてもエキサイティングとは言い難い作品だったが
出てくるセリフのひとつひとつが深く、書き留めたくなるようなものが多かった。
セリフの宗教色が強いので、キリスト教の知識があるとより楽しめる作品となっているかもしれません。よい時間を過ごしました。