主人公が警察に車を止められるシーン。

 

見た事がある。

毎月のように更新される動画を何度も。

 

 

ブラックコミュニティの家族は子供にまず、警察に車を止められたらどうするかを教えるのだと聞いたことがある。

両手をボードの上に出し、決して動かさないこと。

(少しでも下の方に出せば銃を出すと勘違いされて撃たれる)

決して口答えしないこと。

(機嫌を損ねさせるな)

 

それは、その場で殺される人が跡を絶たないからというだけではない。

殺されなくとも逮捕されれば推定有罪になる可能性がある(/あった)のだ。

 

 

この映画の舞台は1980年代アラバマ州。

実際の人物ブライアン・スティーブンソンの自叙伝を原作としている作品である。

ブライアンは現在63歳。現役弁護士として精力的に活動を続けている。

 

この作品の一番の衝撃はここ。

非常に最近の話であり、現在も活動が続いているという部分にあるのではないか。

 

人種差別と聞いても、私はどこか歴史上の話のように感じていた。キング牧師は偉人だし、アパルトヘイト運動が起きたのは何十年も前のこと。その感覚とアップデートされ続ける警官による暴力動画が結びつかず、よく分からない話だと思っていた部分があった。

 

この映画はマイケル・B・ジョーダン、ジェイミー・フォックスという2人の最高キャストを主軸に、一人の無実の死刑囚を解放すべく戦う道のりを描いている。

 

ジェイミーが演じる死刑囚ウォルターの空虚な目がマジで忘れられない。。

こういう人が沢山まだ残っているのだと思うと、暴力動画に憤る人々の気持ちが少し身近に思えた。これは過去の歴史と戦う人々の話ではない。現在もなお、偏見と差別によって人生を狂わせられる人々が正義を求める話なのだと。

 

差別をテーマにした作品で、現在にも続く差別が描かれている事はそんなに多くない。それだけ勇気のいる話だからだと思う。

だからこそ観てほしい。

キャストも、演出も、脚本も、最高でした。