自由奔放で格好いい裕次郎と
美しさの絶頂期の浅丘ルリ子

 

 

 

★★★★☆

 

 

石原裕次郎と浅丘ルリ子の絶頂期が重なりあったわずかな期間に奇跡的に生まれた傑作

 

 

 

<ストーリー>

スターの北大作(石原裕次郎)とマネージャーの典子(浅丘ルリ子)が付き合い始めてから730日目の朝

「今日は何の日か知ってる?」(典子)

「昨日の続きさ」(大作)

 

一日一日を大事に生きている典子と、毎日忙しいスケジュールをこなしているだけの大作。二人の関係も倦怠期に入りつつある。

ある日、大作は「ヒューマニズムを理解できるドライバーを求む」という新聞広告を見つける。

テレビ番組のゲストに広告の依頼主の井川美子(芦川いづみ)を呼んだ大作は、その場でジープを九州まで運ぶ仕事を引き受ける。

テレビ番組に呼ばれる美子(芦川いづみ)

 

番組後、そのまま九州へ出発

 

 

 

 

 

 

当時としては珍しいロードムービー。昭和30年代の街の風景が見れるのが嬉しい。

 

 

 

人気者の裕次郎が、やってくるとどこへ行っても大勢の野次馬がいて凄いことになっているが、映画の主人公もマスコミのスターという設定なので不自然さがない。

 

 

 

 

タイトルのストップモーションとテンポのいい編集。俯瞰ショットやグルグル廻るカメラ、バックミラーを使った演出など、随所で見せるカメラワークが素晴らしい。

テンポのいいタイトル

 

随所にみられる俯瞰ショット

 

バックミラーを使った演出

 

 

 

二人で祭りに突っ込んでいって水をかけられまくるという謎のシーンもあり、ここも含めて合成がチープなのが残念。

祭りで水をかけられまくる

 

合成はチープ

 

 

 

スターとマネージャーとして2年間、常に一緒に過ごし倦怠期に入っていた二人がジープを運ぶ仕事を通じてお互いを意識し真の愛に目覚めるのと対照的に、2年の間、手紙のやり取りしかできなくても愛し合っていたと思っていた芦川いづみと小池朝雄の青年医師がジープを届けるという目的を達成した後、意外にもまったく燃え上がらなかったのも印象的。

2年ぶりの再会なのに何故か盛り上がらない芦川いづみと小池朝雄

 

 

 

「愛は言葉じゃない」

 

大自然の中で二人がそれまで封印してきたキスを交わすラストシーンもよかった。

 

 

 

 

とにかく、石原裕次郎が格好いい。

服のセンスもいいし、乗っているジャガーのオープンカーもお洒落。歯並びの悪さですらチャームポイント。

スターなのにとてつもなく歯並びが悪い

 

 

 

浅丘ルリ子もとんでもなく美しい。

自分の下着姿を鏡に映して「全然いかしちゃってるわ」って言われても全然納得してしまう。

雨の夜、下着に男物のシャツを着て裕次郎に迫るルリ子の姿は神としか言いようがない。

スラリと伸びた足から入るショットが多いのも印象的。

 

 

 

サングラスをかけた裕次郎と髪を後ろになびかせたルリ子がオープンカーに乗っている姿もサマになってる。

石原裕次郎も浅丘ルリ子も当時20代だが、大人の格好良さ。

 

 

 

自分はこの映画が作られた1962年に生まれた。

自分にとっての初めてのリアルタイムの石原裕次郎体験は1972年から始まったテレビドラマの「太陽にほえろ!」だった。

昔の銀幕の大スターとは知っていたが、30代とは思えない顔のむくみと歌番組に出るときの襟の大きなワイシャツを着たダサいファッションの印象しかなく、完全に“過去の人”だった。

スマートで格好いい

 

10年後、「太陽にほえろ!」が始まったころ(まだ30代)

 

 

最近になって、過去の日活映画を見るようになって20代のころの石原裕次郎は、最高に格好よくておしゃれで自分がテレビで見た石原裕次郎とは別人だと認識した。当時の若者が熱狂したのも無理もない。

 

1956年のデビュー、翌1957年には「嵐を呼ぶ男」、「錆びたナイフ」、「俺は待ってるぜ」と傑作が目白押しで、その後も「赤い波止場(1958)」、「あした晴れるか(1960)」、そして本作「憎いあンちくしょう(1962)」と、この時期(1957~1962)に傑作が集中している。

 

相手役の浅丘ルリ子は1961年までの日活映画では小林旭の相手役が多かったが、「憎いあンちくしょう」と「銀座の恋の物語(1962)」でコンビを組んだ蔵原惟義監督とは「執炎(1964)」、「愛の渇き(1967)」と傑作を連打し、その後の他社出演「狙撃(1968)」、「男はつらいよ 忘れな草(1973)」でも印象を残し、映画女優としてのピークは1962~1973年あたりだろうか。

 

 

 

石原裕次郎と浅丘ルリ子のピークが重なっていた1962年、ここに蔵原惟義監督のモダンな演出が加わって奇跡的な傑作えとなった。

石原裕次郎と浅丘ルリ子の共演作は、1964年に「赤いハンカチ(1964)」というムードアクションの傑作もあるが、裕次郎はすでに顔の輪郭のシャープさが無くなっており、ピークはすぎていたのではないか。

 

 

 

 

カラー105分

 

【鑑賞方法】DVD CRIERION COLLECTION

【原題・英題】I HATE BUT LOVE

【制作会社】日活

【配給会社】日活

 

【監督】蔵原惟義

【脚本】山田信夫

【撮影】間宮義雄

【音楽】黛敏郎

【編集】鈴木晄

【美術】千葉和彦

 
 

 

【出演】

石原裕次郎:北大作

浅丘ルリ子:榊田典子

芦川いずみ:井川美子

小池朝雄:小坂敏夫

長門裕之:一郎

川地民夫:尾崎宏

佐野浅夫:奥山

井上昭文:男

草薙幸二郎:ラジオ局のディレクター

高品格:大衆食堂の客