七人のガンマンのキャラクター設定が秀逸
★★★★☆
ジョン・フォードの西部劇が大好きだった黒澤明が西部劇を時代劇に置き換えた「七人の侍」は海外でも熱狂的なファンを生んで、その一人がアンソニー・クインであり、当初はアンソニー・クインが主役でユル・ブリンナーが監督する予定だったが、紆余曲折経て最終的に主役はブリンナーに、監督は「OK牧場の決斗」などの決斗3部作を撮って絶頂期だったジョン・スタージェスになった。
<ストーリー>
メキシコのある村では毎年収穫期になるとカルベラ(イーライ・ウォラック)率いる盗賊に食料を奪われていたが、我慢の限界を超えた村人たちは銃を買って戦うことを決意する。
町で腕のいいガンマンのクリス(ユル・ブリンナー)を見つけ村の現況を相談するとクリスからはガンマンを雇った方がよいと言われ、早速ガンマン探しが始まる。
集まったのは7人、村に到着したガンマンたちは村を要塞化して、村人に戦い方を教えカルベラたちを迎え撃つ。
クレジットにはAkira Kurosawa(黒澤明)の名前はどこにもない。冒頭のメインタイトルでThis picture is based in the Japanese film “Seven Smurai”, Toho Company. Ltd.とだけ出る。非常に無礼な扱い。
ストーリーはほぼオリジナルの「七人の侍」を踏襲しているが、途中で村人がカルベラと密通し、一度ガンマンたちが村を追われる部分はこの映画のオリジナル。
村を追われたガンマンたちは再び村に戻る
戻ってきて、最後の決戦となるが敵に倒されるガンマン4人がすべてこの最後の戦闘で短時間に次々と倒れてしまうのはちょっと雑な展開で残念。
「七人の侍」ではムードメーカーになるはずの平八(千秋実)を最初の夜襲で失い、最終決戦の前に参謀役の五郎兵衛が倒れることで、夜襲や序盤の闘いで戦力を大きく減らした野武士側と侍たちの戦力の拮抗が生まれ戦闘シーンの面白みと緊張感が出てよかったのに。
ジョン・スタージェスの演出は、テンポよくきびきびして冴えている。ガンファイトはもちろんのこと、最初の闘いでカルベラたちが障害物を乗り越えながら馬で村を疾走するシーンのダイナミックなスピード感。
ガンファイトのシーンではやはりマックィーンが格好いい
この疾走感!
エルマー・バーンステインのダイナミックな音楽も傑作。有名なメインテーマもいいが、ブリンナーとマックィーンが葬儀の馬車を無事に墓地まで届けた後に町に戻ってくるときの経過な音楽の盛り上がりも最高。
「七人の侍」は侍たちのキャラクター設定が秀逸だったが、この「荒野の七人」もオリジナルのキャラクターをうまく生かしながら若干の変更も加えて、この作品のガンマンたちも魅力的。
以下、「七人の侍」のキャラクターと比較すると・・・。
〇クリス(ユル・ブリンナー)≒勘兵衛(志村喬)
知力、人間性、腕前など、すべてにおいて理想的なリーダーで勘兵衛と大きな変更点はない。演じるユル・ブリンナーは「ウエストワールド」同様、全編にわたってほとんど帽子と頭部が一体化しているが、村人と準備作業中に一度帽子を脱ぐシーンがあるが、やはり丸坊主のガンマンは違和感強い。
一度きりの脱帽シーン:違和感ありあり
〇ヴィン(スティーヴ・マックィーン):五郎兵衛(稲葉義男)+七郎次(加東大介)
「七人の侍」では作戦参謀の五郎兵衛と現場で働く古参兵の七郎次はどちらも勘兵衛の右腕だったが、これを一人に集約したのはグッドアイデア。
演じるマックィーンは最高に格好いい。薬莢を振ったり、意味なく帽子を脱いで頭にかざすなど小芝居のオンパレード。主役のブリンナーが怒り狂ったのもわかる。
菊千代の女好きのキャラクターをヴィンに振ったのもポイントが高い。
小芝居その1:薬莢を振る
小芝居その2:帽子をかざす
若い村娘に見とれる
〇オライリー(チャールズ・ブロンソン)≒平八(千秋実)
薪割り名人のオライリーは登場の仕方が平八と似ているが、腕が中の上の平八と異なりオライリーは凄腕ガンマン。菊千代の子供に人気のキャラクターをオライリーに振られている。
子供と仲良くなり子供をかばって死ぬ
〇ブリット(ジェームズ・コバーン)=久蔵(宮口精二)
登場の仕方、キャラクター、腕前、最後まで何から何まで久蔵そのまま。
登場シーンも久蔵と同じく腕比べ
最後も久蔵が刀を投げたようにブリットもナイフを投げて死ぬ
〇チコ(ホルスト・ブッフホルツ):菊千代(三船敏郎)+勝四郎(木村功)
菊千代の粗暴なキャラクターを若くて未熟な勝四郎にあわせたのは良いアイデア。
しかし、新人同様のブッフホルツには荷が重かったか。
最後に村に残るという選択をするのも印象的。
菊千代も魚を素手で捕まえてましたな
菊千代も番木を打って村人を集めていましたな
勝四郎も村の娘とできちゃいましたな
最後に村に残る決意をするチコ
〇リー(ロバート・ヴォーン)NEW
オリジナルのキャラクター。蝶ネクタイに手袋のコスチュームといい言動といい絵にかいたようなキザだが、神経症的なトラウマの設定はよかった。
最後の決戦までは準備万端でも銃を抜かない
最後の決戦で見せ場アリ
〇ハリー(ブラッド・デクスター)NEW
苦しい村人を助けることよりも、金銀財宝目当て。クリスと親しい旧知の間柄という点では勘兵衛の古女房の七郎次的な設定かもしれないが、キャラクターが違いすぎる。村人に金銀財宝のありかをしつこく聞きすぎた罰として最初に死んでしまう。
最初に退場
オリジナルのリーとハリーのキャラクターも魅力的だったが、残念だったのガンマン集めの手段が、ヴィンとチコ以外のほとんどがクリスの旧友という設定だったことで、この部分の出来はオリジナルの「七人の侍」に軍配が上がる。
演じた俳優の多くはその後、トップスターになっており、主役級にならなかったホルスト・ブッフホルツとブラッド・デクスターの2人も中堅俳優としてそれなりに活躍した。
2016年にロバート・ヴォーンの死で7人のガンマン全員が亡くなってしまった。残念。合唱。
登場人物でもっとも大きな変更点は盗賊の頭のカルベラにキャラクター付けがなされていることで、セリフも多く演技派のイーライ・ウォラックがキャスティングされビリングも2番目。
村人たちのキャラクターは「七人の侍」ほどは描きこまれてないが、長老は「やるべし」の高堂国典に匹敵する存在感。ラストにも登場する。
広大なロケーション撮影もよかった。
カラー128分
【鑑賞方法】ブルーレイ(吹替) MGM
【原題・英題】THE MAGNIFICENT SEVEN
【制作会社】ミリッシュ・カンパニー=アルファ・プロ
【配給会社】UA
【監督】ジョン・スタージェス
【脚本】ウィリアム・ロバーツ
【原案】黒澤明 小国英雄 橋本忍「七人の侍」
【制作】ジョン・スタージェス
【撮影】チャールズ・ラング・Jr
【音楽】エルマー・バーンステイン
【編集】フェリス・ウエブスター
【美術】エドワード・フィッツジェラルド
【出演】
ユル・ブリンナー:クリス・アダムズ
スティーヴ・マックィーン:ヴィン
チャールズ・ブロンソン:オライリー
ジェームズ・コバーン:ブリット
ロバート・ヴォーン:リー
ホルスト・ブッフホルツ:チコ
ブラッド・デックスター:ハリー・ラック
イーライ・ウォラック:カルヴェラ
ウラジール・ソコロフ:長老
ロゼンダ・モンテロス:ペトラ