加藤泰がこんな映画を撮るなんて!
評価:★★★★★
加藤泰監督の後年の任侠映画の名作群とはまったく異なる作風にびっくり。
<ストーリー>
関ケ原合戦のころ、戦場泥棒のお霧(渡辺美佐子)、清次(大前均)、伊三(常田富士男)、六(ジェリー藤尾)たちに落武者の根津甚八(米倉斉加年)、筧十蔵(春日俊二)らが加わった。十数年がすぎて天下が再び風雲急となったある日、一行は以前知り合ったはなれ猿の佐助(中村錦之助)というヘンな野郎と出くわした。彼は不思議な術を身につけていた。佐助をリーダー格とし、ギターをかき鳴らして徳川家を諷刺する由利鎌之助(ミッキー・カーティス)を加えた一行は、大坂城に向った。
ここで秀頼公から入城をすすめられて優秀な部下を探しまわっていた真田幸村(千秋実)と知りあい、彼に従うことになった。穴山小助(河原崎長一郎)と望月六郎(岡村春彦)を加えた真田十勇士が出来上り、六文銭の旗があがった。
いよいよ大坂冬の陣、しかし大坂城の幹部は籠城をとなえ、業を煮やした真田隊が勝手に出撃して戦果をあげても叱られる始末。
やがて大坂城の外濠を埋めることで和議が成功し休戦。
頭に来た真田は俺たちだけでやろうと飛び出したが孤立無援、三人が死亡。
元和六年夏の陣が始まり、諸将は続々倒れ、天王寺の決戦で幸村も死んだ。燃える大坂城を仰ぎ、佐助は徳川側の服部半蔵との無意味ともいえる、しかし凄じい忍術合戦に体をブチ込んでいくのだった。(映画.COMより抜粋)
冒頭、長い横移動の関ケ原合戦の場面ではくすんだ色合いでシリアスな映画と思いきや・・・。
いきなり序盤でミッキー・カーティスのギター、服装も素っ頓狂。
その後も、時代考証完全無視。「逮捕」「就職」などの現代語。
警察署前の交通事故報告のような看板
ジェリー藤尾の合戦場の交通整理。
後年の倉本聰「浮浪雲」はこの作品のテレビ版か?
映像も凝っていて、いきなりカメラの向こうの観客に話しかけるミッキー・カーティス、千秋実の顔を歪ませるエフェクト、猿飛佐助対服部半蔵の超斜めの構図など実験的なカメラワークも多い。
手や唇のアップ、千秋実が戦略を喋っている時に見つめ合う二人など、佐助とお霧のラブシーンが凝っている。
配役もいい。
真田十勇士には中村錦之助、渡辺美佐子、ジェリー藤尾、ミッキー・カーティス、常田富士男、河原崎長一郎、米倉斉加年、大前均、など個性的な面々。
まだ偉そうで暗い萬屋錦之介になる前の元気で明るい中村錦之助
渡辺美佐子が若い時が意外にきれい
脇役も充実、特に「熱い」と叫んで飛び上がる大野修理役の佐藤慶と、超格好悪い死に方の真田幸村役の千秋実が最高。
頭をぶつけて恰好悪い登場、転んで槍に刺さって格好悪い死に方。
加藤泰作品のアイコン汐路章はギターの音色に導かれて何故か川に入って全滅してしまう侍で登場。
田中邦衛も顔を見せる
圧巻は本間千代子扮する千姫であろう。この千姫のキャラクターは素晴らしい
闘いの真最中にルンルンと着物を合わせながら才蔵に「お友達になって」、舞踊大会では羽根つき扇子を持ってジュリアナ状態、淀殿の大事な話の最中にも秀頼とあやとり。
ステップを踏みながら近づく忍者、城内の庭でロカビリー風の音楽に乗せて踊る若者たち、心身健康活動的舞踏大会の乱痴気騒ぎ。
今や完全にカルト化している時代劇ミュージカルの名作。
楽しい
カラー100分
【鑑賞方法】DVD配信 東映
【原題・英題】SASUKE AND HIS COMEDIANS
【制作会社】東映京都
【配給会社】東映
【監督】加藤泰
【脚本】福田善之 小野竜之助 神波史男
【原作】福田善之
【撮影】古谷伸
【音楽】林光
【編集】宮本信太郎
【美術】井川徳道
【出演】
中村錦之助:はなれ猿の佐助
渡辺美佐子:むささびのお霧
大前均:ずく入の清次
常田富士男:どもりの伊三
ジェリー藤尾:かわうその六
春日俊二:筧十蔵
米倉斉加年:根津甚八
ミッキー・カーチス:由利鎌之助
河原崎長一郎:穴山小助
岡村春彦:望月六郎
千秋実:真田佐衛門佐幸村
佐藤慶:大野修理亮治長
小川虎之助:大野道犬
明石潮:織田有楽斎
阿部九洲男:後藤又兵衛基次
大村文武:木村長門守重成
水木襄:豊臣秀頼
本間千代子:千姫
花柳小菊:淀君
原田甲子郎:服部半蔵
田中邦衛:坂崎出羽守
汐路章:川っぷちの武将